蒼のウィステリア

藤色雨とリシテアの台本や情報をまとめています。

1人声劇台本「小さな恋 side 幽霊」

幽霊……若くして亡くなり古民家に地縛霊として存在している。

自分の姿が見える人間と二人暮らし 明るくのんびりちょっと素直じゃない

 

シーン1

SE:床が軋む

あー……ねぇねぇ ここの床ちょっと軋んでないかな

気のせいって……相変わらずなんだから君は

もうもう 百合ちゃんって呼ばないの 百合子さんって呼びなさい

君よりは随分先輩なんですからね わかりました?

あ そうだ……今日のお供えものはないの?

昨日おまんじゅう買ってきたって言ってたじゃない

コーヒーと一緒に供えてよ! そうじゃなきゃ味わえないでしょ!

こんな請求する幽霊っているの……みたいな顔しないの

はやくもってきてよーポルターガイストしちゃうんだからねぇー!

SE:陶器を置く音

はあ……おいしい……死んでから初めてコーヒーのおいしさを知りました

私 大学で研究中に死んじゃったって言ったじゃん

当時のコーヒーってそんなにおいしくなかったのもあるけど

コーヒーを味わう余裕なかったんだよねぇ

毎日毎日 資料とにらめっこして……仲間達と喧嘩したり協力したりして……

青春かっこ引きこもりだったけど……そんなときに心臓止まったんだから

世話無いなーと思っちゃう

それにしてもさー なんか忙しそうだね どうしたのよ

お客さん? めっずらしい……誰が来るの? どんな人なの?

そりゃ 百合子さんですから……同居人の様子が気になるわけで

地縛霊でここにいることは ここでつっこまないのー

私だって ちょっとは考えてるんですからそのことは

本当はもっと自由になりたいのに

ほら 喉に小骨が引っかかっていると 気になってしょうがなくなる

そういうことってあるでしょ?

喉に骨が……って もうそういう例え! 例えだから!

はあ……もう 君らしいなぁ

シーン2

SE:ピンポーン

お客さんだ

あ 結局誰がくるのよ!

教授? 大学教授?

橋場さん……

ん? あ どうしたの

ええ……私の顔が……? うそでしょ

いやね……なんか似てるなと思っただけ

懐かしい……名前に

SE:足音
SE:ふすまを開ける音
SE:座る音
SE:風鈴の音

バーブ

<<昔 もう30年以上前の事だろうか

ろくにクーラーの効かない研究室で

飲み物片手に話し込む仲間がいた

私と 静香と そして……

静香と学生結婚した助手の橋場さん

眼鏡が丸縁(まるぶち)で似合わない人だった

優しく笑う人だった>>

今 あの頃よりずっと大人になって 老いた彼が

君と話している

SE:虫の音
SE:風鈴

あ……君か……教授さん帰ったの?

そっか……なるほどね

倉の古文書の鑑定か なんかよくわかんないくらい色々あるよねここ

なるほど……

うん……ちょっと 楽しそうね

話があってたし ノリも似てるかもね

まあ あの人は昔から話聞き上手だったしねぇ

ああ……うん……知ってるよ 彼のことは

よく 知ってる……

……ん……

うん……

へ?

べ 別になんかあったわけじゃないよ

幽霊の私に何かがあるわけないじゃん

心配かけちゃったかーごめんね

はあ……まあ アレよ

大学で研究してたって言ってたでしょ

その時の仲間の一人

眼鏡 丸縁やめたのね……超ださかったのに

なんだか 落ち着いた大人って感じになっちゃった

そうねー年月の変化に驚いたのかも

人って年取るもんね 当たり前だけど

奥さんの力で イメチェンしたのかしら

そう あの教授ってか 橋場さん……学生結婚してたの

生意気だわー あんなダサダサ丸縁眼鏡だったのに

あれ……でも あいつ指輪してたかな

私が生きてるときは 指輪してたのよ橋場さん

静香って名前の奥さんもつけてたわ

仲いい二人だったけど……ねぇ……時間が仲を変えたのかな

ふう……お酒 供えてよ

ちょっと……酔いたい……

君も飲もうよ

え? 明日橋場さんと飲むの? 資料の講釈を聞く????

何よ いつのまに仲良くなったの

橋場さんの人たらしめ……

つまんないつまんなーい!

SE:足音

あ 行っちゃうんだ

……つまんない

シーン3

SE:蝉と風鈴

暑いね……早く 夏が終わらないかな

静香をほっぽりだして 資料探しするなんて

本当……橋場さんって 研究者の鏡

そもそもさー 聞きはするのよ

研究者は学生結婚か晩婚かの二つに分かれるって

静香は美人だし……お金もあるし……

何より優しいよね……

いい奥さんじゃん……

SE:本を動かす音

ちょっと近いよ……橋場さん

どうして……そんな……あっ

SE:抱きしめる音

ああ……うん……そっか

バーブ
<<……これ 夢だね>>

うわ……幽霊でも夢見るんだ

眠れることにもびっくりだけど

昨日のビールのせいかな……はあ……

情けない夢だよ めっちゃ妄想じゃん

橋場さんが私を意識してくれたこと……一度だって無かったのに……

SE:足音

おはよう 君か

むう……むぅ……

いきなり鳴きだしたっていいじゃない

むぅ……むぅ……

鳴きたいときだってあるのだよ 幽霊だって

むぅ……むぅ……

そういや もう秋だっけ

蝉はもういないよね……

へへ……いや 夏の……夏の夢を見ただけ

シーン4

SE:鈴虫

ふんふんふーん……ふふん……ふふーん……

橋場さん もう帰ったのね

ふんふんふーん ふふーん

何よ ビール供えてくれるの 気がきくじゃん

君も飲むのか

結構さっきまで飲んでなかった? 

ははー 酔わないからか 酒豪は違うね

私に喧嘩売ってるのかな

あはは 冗談だよ冗談

飲もうよ かんぱーい

SE:缶をあわせる

鼻歌? ああ 歌ってたね

上機嫌じゃないよ……別に

むしろ心がざわついて 気持ち悪いくらい

あーあ……はあ……

んー……んぅ……

はあ……

静香……もう亡くなってるのね

前に言ったでしょ 橋場さんの奥さん

私の友達……

指輪つけてなくて当然だよ

既婚者でもないんだから

元からちょっと体弱かったけどねぇ……

そうか もう……そんなに時間が経ったのか

寂しいとか……思わないし……

……んん……

ごめん ウソだわ……寂しい

静香も橋場さんも進んでいて 私だけ取り残されてるみたい

おじさんになっちゃってさ 橋場さん

いや もう60近いのか おじいちゃんかも? かも?

はは 私は何も変わらないまま 今のままだわ……

……橋場さんと何かあるわけないじゃない

あの人とはなんもない

なんもないまま……私は心臓発作で死んだだけ

ほんとさ なんかさ……死んだって虚しいよね

言いたい言葉も言いたかった言葉も 全部なくなっちゃう

……虚しい

SE:風鈴

あはは かっこいいこと言うじゃん

私の愚痴って結構長いよぉ……覚悟きめなきゃ行けないレベルだよぉ

それでも聞くっての?

はは……酒のつまみにはなるってか

あーもうーきらーい

イイ男過ぎてきらい……

私の好きなタイプはねー

だっさい丸縁眼鏡をつけたやつなの

優しいけど 人の気持ちを全然気づいてないヤツなの……

心配しないで だいきっらい

泣かないわよ ダサいから

でも……ありがと

アンタはいい人と巡り会えるといいね いつかは

私に構ってないでさ

やだ……なんであんた

そんな顔 してんのよ

バカだなぁ……

シーン5

<<花のように短い人生で 一番後悔していることがあるとしたら

それは彼に告白できなかったことだ

むすばれることなんてない 徒花みたいな恋

静香との関係もギクシャクしたくなかったし

彼を驚かせたくも無かった

はは……言い訳はいくらでも出来る

本当は何より 私に意気地がなかったのだ

彼に告白する 勇気を持てなかったのだ>>

SE:足音

あー やっときたあ……橋場さんって本当ノロいだから

もう今日で最後だもんね……資料確認して あいさつしたら……それでって感じ?

もぅ 会うことはないだろうね

はは……あー もうさ……何も気にする必要ないんだよ

私はもう 生きちゃいないんだから

でもこの想いはまだ息づいてる……やっかいだね 恋は

へー その気持ち 分かるんだ ふふ そっか

私は終わらせなきゃいけない気がする

後悔をここで降ろさないといけないんだよ

あーあ 生きてるウチに言っておくモノね

大事な言葉は

橋場さーん!

私 あなたのこと 大好きでしたっ 愛してました!

この想いは生きてるウチに伝えられなかったけど

もう届かなくても 私は……!

あなたがすきでした

<<この想いを 彼は永遠に知らない

私の独りよがりな告白だ

けれど……>>

間2秒間 

今の聞いた? ねえ 君聞いた?

懐かしい声だって 友人の声だって

あの人 30年も前に死んだ女の声を覚えてたのよ

もう 忘れてても当然なのに……

ばか……ばか……大好き……

でも さようなら……橋場さん

【朗読台本】神様と七色の魂と1000年

 元々、私は風の精霊だった。私の身はとても軽く、どんなモノも私の障害にはならなかった。
私はただ駆け行く風にすぎなかった。しかし、そんな風に翻弄されていた、人というものは……やがて私を祀るという行為で私の走りを止めようとした。
風が強すぎて、作物はなぎ倒される……その被害を食い止めるためだったらしい。
 自由を奪われ、神としてあがめ祀られる、その日々が苦しくなかったといったら、ウソになるだろう。
私は外に出ることが好きだった……好きだったのだけれど。

 やがてどうにもならないと悟った時、私は……私に供え物をする人間達を初めてまともに見た気がする。

 神となって随分経った時だろうか、ある日私に供物を捧げにきた女性がいた。
 それはけして珍しくない光景だったが、私は女性の魂を見たとき、驚いた。

 彼女は七色の魂を持っていたのだ。その淡々と柔らかく変化する色合いに……一目で心を奪われた。
恋という言葉で片付けていいものか……未だに私は迷う。彼女の魂の美しさ、そして……彼女の瞳の寂しさ……それがあまりに切なかった。

 彼女は……不幸な生まれを背負っていた。彼女は、いずれ水の蛇神に捧げられる存在だった。彼女の瞳にはいつも諦めがあった。私はそんな彼女に何かしてやれないかと、考えに考えあぐねたが、死ぬその瞬間まで何も出来なかった。私を祀る社から、じっと村を見つめる彼女の姿が印象的だった。
 声をかけることが出来れば、少しでも彼女の心を癒やし、軽くすることが出来ただろうか。
だが彼女に私の言葉は届くことはなく……私はそっと彼女の隣にいた。

 彼女の頭に飾られた、白い花の香りが、今も記憶から消え去ることはない。

 七色の魂は、その後何度も何度も私の前に現われた。
 彼女が生まれかわったのかもしれないし、七色の魂が複数あったとしてもおかしくもなかった。
 真相は未だに謎だが、その魂を持つモノは、魂の美しさと引き換えといわんばかりに、恵まれない境遇だった……
 あるものは、親に捨てられ、あるものは幼い年で亡くなった、命を全うしても何かに悩まされて苦しんだりもした。
 私は何度も、七色の魂を持つものに話しかけた。

 しかしついぞ、私の言葉をかえすものはなかった。

 私はかつて風の精霊だった。神になった後は、人に祀られ囚われ、廃棄されかけようともまだ神という立場に、縛られている。だが私は……それでもすがるように、七色の魂の存在に、心を動かされている。

 ……雨が降る晩だった。ふらふらと彷徨うように、傘を手にした子供がきた。雨から逃げているようだった。その少女は七色の魂を持っていた……そして哀しげな顔もしていた。

 ああ、なんということだ……今度こそ私は……

 堪えきれない思いを腹の底におさえて、私は少女に声をかける。聞こえなかったとしても、私はそなたに想いを傾けている。

 きょろきょろと辺りを少女は見渡す。そして私の方見た。

「声をかけてくれたの? お兄ちゃん」

 ……その瞬間、息が詰まった。
 永劫叶わぬとおもった奇跡が……今、叶ったのだ。

 

 

関連動画というかむしろ本編です


【女性向け】神様に優しくしてもらう11分【シチュエーションボイス】

【声劇台本】城田さんと山本さん(1:1(性別問わず)

一応男女前提で台本を書きましたが、どんな組み合わせでもひどい感じになる台本なので、性別は問わない台本にしています。

山本……部下なのに、上司で恋人の城田に上司ぶるように強要される

城田……上司、厳しくSっぽいといわれるがドM

山本「ちょっと城田さん、この報告書、どうなってるんですか……データの数値が微妙にずれているじゃないですか」

城田「あ……すいません、データをちゃんと処理し切れてなくて……すぐに直します」

山本「城田さん、あなたはケアレスミスが多過ぎです、どうしてそんなに不注意のミスをするのですか。もったいなくてしょうがない」

城田「すいません……すいません……」

山本「ちょっとやめてください……そんなに泣きそうな顔されても困ります。どうかなると思ってるんですか」

城田「いえ……それは……うう」

山本「はあ、神経がまだ青い学生なんですかね……まったく……ちょっとこっちへ、そんな顔で働かれても困るんで」

城田「はい……」

山本「まったく、手がかかる……」

城田「はぃ……」

山本「……あの」

城田「どうされたんですか? 山本部長」

山本「いやいやいやいや、その言葉そのまま返しますよ城田部長」

城田「え? あー、私のこと、部長って言った」

山本「いやいや実際そうでしょ、あなた部長でしょ。ボク、あなたの部下でしょ」

城田「そうだけど……でもここウチだし、逆転ごっこしてもいいじゃない」

山本「分かりますけど、このロールプレイ趣味じゃ無いんですけど」

城田「え、私、山本さんが厳しく、私を追い立てるの、ぞくぞくするんですけど」

山本「ううう。ああああーなんで彼女がドMだったんだよぉおおお」

城田「そんな、恋人がドMってダメですか? ドMには人権がないんですか? 何って言うか、ああ、家畜みたいに扱われるってことなの……え、きゅんとしちゃう……」

山本「ボクはSMじゃなくていいんですよぉ、別に痛めつけて喜んじゃうひとじゃないんですよー」

城田「大丈夫です、私、知ってますから。ドSの方は、サービス精神に満ちあふれた紳士だと!」

山本「城田さん……ボクはあの、あなたが厳しくても面倒見のいい方だと思ってました、それは正直変っていません」

城田「山本さん……」

山本「あなたがいたから、凡ミスばかりの自分がどうにか一人前になれたのです」

城田「確かに……あなたは仕事に時間がかかってしまって、能率を考えるのが下手でした……ちょっと焼きもきしてましたが、工夫を重ねれば、人の何倍も仕事が出来ると分かってました」

山本「そうです、まさにその通りです」

城田「あなたは私の指示やアドバイスに従ってくれた……なかなかそういうことを皆が皆できるわけじゃないです。私はそう、アナタの仕事への姿勢が格好よかった……」

山本「惚れるきっかけはいろいろとあるでしょうが……少なくともボクたちの場合は、SMは関係ないかと」

城田「確かに……」

山本「どうか、初めの気持ちにもどりましょう。ね、城田さん」

城田「山本さん……そうですね、その通りです。けれどこんな時なのですが、お願いがあるんです」

山本「はい、なんでしょう」

城田「今の優しい口調で、鞭を一発いただけませんか?」

山本「……はい?」

城田「私はあなたの姿勢に惚れました。それは本当に本当です」

山本「う、うん」

城田「でも私は、いつも自分を隠しています。好きな人の前だけではそんな自分を解放したいんです」

山本「城田さん……」

城田「私に愛を込めて鞭をいただけませんか? SMだからってだけで嫌悪せずに……」

山本「そうなのですか……なら、ボクの情けない好きなことを受け入れてもらえませんか? あなたに鞭をふるうかわりに」

城田「それはどういう……」

山本「ボクを踏んで下さい、あなたのその足で」

城田「え?」

山本「ボクもドMなんです……ずっと怒られていた時期、正直とても興奮してました」

城田「あら……山本さんまで」

山本「うう……」

城田「わかったわ、山本さんの踏んで欲しいところ、いっぱい踏んであげる」

山本「ありがとうございます!」

城田「ふふ、覚悟をしなさいよ、私……本気だから」

山本「俺も、君が泣いてもやりつづけるから……覚悟しろ」

城田M「こうしてとあるカップルは仲良くなりました、今まで以上に」

山本M「夜ごと二人の部屋からは、いろんな音が聞こえたとか聞こえないとか……お、おしまい」

 

 

【声劇台本】それが儚い終わりだとしても(男性2:女性1)

加賀明久(かがあきひさ)……重度の病気(心臓系だと思って下さい)で病院で人生の多くを過ごしている。病気の影響で二次症状で全身はぼろぼろ、余命もそれほど長くはない(一ヶ月後にすぐ死ぬと言うレベルでもないが)
性格はあっけらかんにみえてうじうじすることも。ドライに見えて湿っぽい繊細な男の子。髪は紫、着る服もおしゃれだが色彩がやたら派手である。病院生活で空ばかりを見ることが多く、青と白が身近に感じているが、それ以外の色は縁が遠く、苦手むしろ嫌いだったりする。何も出来ない嫌いな自分に、嫌いな色を着させている。

 

久慈春音(くじはるね)……明久の幼なじみであり、明久の初恋の人。幼い頃は活発な性格で無茶も多かったが、無茶が減っただけで、明るさは消えてない。病院ボランティアでたまたま再会した。明久の変貌した姿に驚きつつも根の繊細さや優しさは変わってないと考えており、やがて仲を深めていく。当初明久が肝臓をやらかして入院しているということを真に受けていた。

 

塩田健司……明久の主治医、落ち着いている雰囲気から人気が高いが、そっけなさも目立つ医師。看取りを専門にしていた時期もあり、出来れば患者には納得した死をと願っているが、現実はハードルが高いと諦めている。
ナニも定めてないのに余命を削る行為に一番キレだしてしまう。優しさと諦めと口の悪さが強い医者でもある。

シーン1

SE:草をふむ足音
SE:秋虫の声

明久「ここに、埋めようか。はるちゃん」

春音「うん……タイムカプセルだよね! でも大丈夫? ここを掘るんだよね」

明久「そうだよ、深く深く掘るんだ……タイムカプセルが見つかったらダメだから」

春音「いつか……またあきちゃんと会えたら…これを開けるんだよね」

明久「いつか、絶対……開けようね」

春音「うん! 約束だよ……」

BGM:昼・まどろみ(イメージ)
SE:風

春音「ん……うん……ふわっ……あ、寝てた……」

春音M「私はびっくりして周囲を見渡す、幸いなことに誰もいない」

春音「さて……集合場所に行こうかなぁ……って、あれ、ここどこだ?」

SE:「・・・」

春音「やば……一人で静かに食べよーっておもったら……ウソでしょ」

春音「迷子じゃん……ここどこよ」

SE:階段を上る音

塩田「ん……こんなとこで何してるんだ君……」

春音「あ、えーとなんといえばいいか」

塩田「その見学バッジ……ああ、病棟ボランティアで来てるんだな」

春音「そうです! お昼ご飯を食べにふらふらーとしたら、ココで食べてしまって……」

塩田「そうなのか……そういえば、さっきボランティアが集合しているのを見かけた。行かなくていいのか」

春音「やっぱ、そうですか! ど、どこで集合でした?!」

塩田「……二階の北病棟だ。君、声でかいな……」

春音「すいません……って、やっば行かなきゃ、失礼します!」

SE:階段を下る音

塩田「……すごい勢いで行ったな」

塩田「若いっていいもんだよ……体力だけは」

SE:缶コーヒーを開ける

シーン2 再会/はじまり

春音「うあぁ……遅れたせいで、ボランティア延長になっちゃった……」

春音M「まあ、患者さんの部屋のゴミをまとめていくだけだから……ちゃちゃっとやっちゃいますか」

SE:トントン
SE:ドアを開ける

春音「ゴミの回収にきました、失礼しますね」

塩田「……明久君、どうするか君次第だが、時間の使い方は考えた方がいいぞ」

明久「はーい、了解でっす」

塩田「……そういう態度、やめろってんだろ、クソガキ」

明久「そんな眉間にしわ寄せたら老け込みますよ、分かってますってこれでも」

塩田「ふん……」

SE:足音

春音「あ……すいません、お話中のところ」

塩田「別に構わん……まだボランティアが続いてたのか」

春音「はは……」

SE:ドアの開閉音

春音M「なんか一言ツッコんでもらいたかったかも……」

明久「誰かな? ごめん、ドアの前で言ってくれた気がするけど……聞いてなかったもんで」

春音「あ、ごめんなさい! 私ボランティアで来てて、ゴミの回収にきまし……」

明久「ああ、そうなの、大変だ……あ」

春音「あき君!」

明久「はるちゃん!」

明久M「驚いた……一瞬何かがこみ上げて言葉にならないほどにびっくりした。会いたいなと思っていた……でも会えたとしたらまさに奇跡で、とても、とても……困難だと知っていた……」

明久「なんでこんな所に……ってか、俺のことよく分かったね……マジでマジでマジで」

春音「それはこっちのセリフだよ! よく分かったね、私のこと」

明久「そりゃー春音ちゃん、全然顔変わってないしー」

春音「そんなことないって! 変わってるからっ」

明久「あはは……そうだね、なんとなくちゃんと見た瞬間分かったんだ……はるちゃんだって」

春音「不思議……私もそんな感じ、なんかあき君だって分かった……というかさ、なんで入院してるの? この病棟にいるってことはそうでしょ?」

明久「ああーそうなの、肝臓を一発やってね、でも治療って言っても実はほとんど終わってて……休め休めって言われてさー、病院で引きこもりしてる」

春音「何ソレ(笑い)ほんと、昔から体弱いよねぇ。というかさ、髪の毛紫だし、ド派手じゃん」

明久「超目立つでしょ(笑い) どんなところでも目立つ自信あっから、探すの楽よ?」

春音「迷子前提なの(語尾笑いながら)」

明久「そうそう、まあ、よかったら暇つぶしに来てよ……俺さぁ、ずっと暇なんだ」

春音「しょうがないなぁ……じゃあさ、はるちゃんって呼ぶのやめてよね。昔の呼ばれ方すぎて、逆に恥ずかしい」

明久「あ、そうか。もう随分前だしな」

春音「はるって呼んでよ、あき君のこともあきって呼んでもいい?」

明久「そうだな、呼び方変更料払ってくれたら……っていただ……つねらないでよ」

春音「昔は素直でイイ子だったのになぁ、どうしてこんなふざけたことを言い出すのか」

明久「はっはは……ジョブチェンジしたのだ。ああ……そんな睨まないでって……全然いいよ、あきで」

春音「よし、わかった! また来るねっ、そろそろボランティア戻らなきゃ……」

明久「うん、また……待ってるよ」

SE:袋のくしゃくしゃ
SE:足音

春音「ばたばたでごめんね!」

SE:ドアの開閉

明久「あー……あ……」

SE:ベッドに沈む

明久「ちょっと神様がいるんだったら…やること、きついって……はる、ちゃん……いや、はる……ははっ、はは……」

シーン2 和やかな日常

春音「肝臓悪くしたとか、お酒でも飲んだの?」

明久「ばっか、そんなことするかよ……ただの突発的なヤツだし」

春音「本当に暇って顔をしてるよねー、いつも何してるの?」

明久「うーん、目の運動?」

春音「目の運動?って、何(笑い)」

明久「目の運動っていったら、目の運動だよ……しないの?」

春音「そんなさもするの当然って感じに言われてもさぁ……スマホとかガン見しちゃうから、目の運動とかしないかも」

明久「そっかぁ。俺は良くするんだよね……天井見て、外見て、空見て、また天井を見るって」

春音「飽きない?」

明久「あきるを通り越してるからなぁ……なんというか無心になれて逆に都合が良いな!」

春音「うそでしょー、アキって変ってるなぁ……」

明久「いや、普通じゃないから面白くない?」

春音「面白いのかなぁ……不思議って感じしかしない」

明久「そこは笑ってくれると嬉しいけどなぁ……ははん」

春音「ちょっとちょっと、もしかして渾身のボケだったの、今の話」

明久「あーあー、ハルが優しくなーい」

春音「ちょっとー、誤解を招くようなこと言わないでよ!」

明久「ふははははは、やったぜ勝ったぜ」

春音「はあ……もぉ。わけわかんない」

春音M「昔、そう小さい頃のアキは体が弱かったせいもあって、友達もいなく気弱だった。そんな彼のことをひっぱるのは私で、翻弄するのも私で、今とまるで真反対だ。彼はあれから、変ってしまったのだろうか……」

明久M「ハルは変らない、その明るさもはつらつとした姿も、変らずそして可愛くなっている……その姿がまぶしいだなんて、とても言えなかった」

春音「アキって姿も性格も、なんか変っちゃったなぁ……って思うけど」

明久「思うけど?」

春音「いや、目が変ってないなって思って」

明久「そうかなぁ、つまりは成長してないってコト?」

春音「ううん、そうじゃないけど……なんていうか、むずかしいな、上手く言えないや」

明久「ナニそれー(笑いを含む)それじゃ俺も分かんないよ」

春音「そうね、あはは」

春音M「変っていないと思う……アキの瞳の奥に見える、寂しそうな光、私はその光を見逃せなかったのだ……今も、昔も」

明久「今、季節って秋だっけ……」

春音「そうだねよ……もう9月の真ん中……あ、そうだ、中庭に出ない? 日差しが気持ちいいと思うよ」

明久「うーん、いいよ……ダルいし」

春音「まただるだる病がでたー、お見舞いに結構来てるけど、ほんと引きこもりだね……外の空気、吸いたくないの?」

明久「外の空気ってさ、というか外自体が俺にはまぶしすぎるの……引きこもりを舐めないでよ、ハル」

春音「はあ……そうなんだ……」

SE:ドアをノックする
SE:ドアの開閉

明久「はい?」

塩田「俺だ……明久君、検査の時間近いのに姿が見えないって、看護師が心配してたぞ」


明久「そうだーいかなくちゃー、でもそんなことわざわざ言いに来たの? 塩田センセー忙しいでしょ」

塩田「ここの近くを通ることになってたんだ、その次いで。おら、看護師に迷惑かけんな、行け」

明久「はいはーい……ごめん、ハル、ちょっと行ってくるよ。多分時間かかるからここまでみたい」

春音「うん、また来るね」

明久「ああ……」

SE:布ずれ
SE:足音
SE:ドアの開閉

春音M「私も帰るかぁ……」

塩田「ちょっと君……明久君のトモダチなんだよね」

春音「はい、そうですが」

塩田「だいぶ、あいつ……君がいてくれて楽しそうだ。ニコニコしている」

春音「そうなんですね」

塩田「……入院が長いからな、でもこんな話をしたくて呼び止めたわけじゃない」

春音「はあ……」

塩田「あいつから、何か聞いてるか? どうして入院しているのかとか、その辺り」

春音「え、肝臓でやらかしたとか」

塩田「そうか……あまりこういうコトをいうものではないが、明久君との距離感を考えた方が良い」

春音「なんでそんなこと……」

塩田「双方のためだよ、それだけだ……あいつとの関係は、覚悟なしで続けるもんじゃない」

春音「言ってる意味が……」

塩田「全てが分からなくていい。ただ言いたいのは、明久の関係を考えろってことだ」

春音「はあ……ですが」

塩田「おっと悪いが時間だ、失礼」

春音「あ……」

SE:足音
SE:ドアの開閉音

春音「ろくに話を聞かずに……言っちゃった。何よあの医者、コミュニケーションレベル、雑魚なんじゃないの??」

春音「(深いため息)はあ……帰ろ」

シーン3 駆け引き

SE:雨

春音「雨が、なかなか止まないね……そろそろ帰らなきゃなのに……落ち着いて欲しいな」

明久「……ねえ、ハル、覚えているかな? 昔、二人でタイムカプセル埋めたこと」

春音「え、唐突だね……覚えてるよ、アキがいなくなる直前だったよねぇ。そういえば……こんな季節だったな、埋めたの」

明久「最近さ、タイムカプセルが無性に開けたくなる……ハルと再会したからかなぁ」

春音「そうなんだ……でも仮にも入院してるんでしょ? 外出許可もらわないといけないんじゃない?」

明久「そうなんだよねぇ……もぎとってくるわー」

SE:雨

明久M「ハルが帰った病室は、あまりに寂しい……その寂しさで胸が苦しくなる。これは病気じゃない痛みでもあって……俺は……」

明久「ハル……」

明久M「まるでまじないのように、彼女の名前を呼ぶ」

SE:雨
SE:ドアの開閉音

明久「ちょっとぉ、ノックをしないなんて……マナー悪いよ」

塩田「マナー悪くて結構。聞きたいことがあってな、外出についてだ」

明久「えー、真っ当な理由でしょ……次の病院の見学に行きたいって」

塩田「ああ……それは聞いてる。だが明久君、これはあくまで俺から見た君の印象だが……君は生きるも死ぬのもどうでもいいってタイプだろ」

明久「すっごいーさすがセンセイ優秀」

塩田「褒め方が雑で、逆にムカつくわ。見学はもちろん許可はする……あっちの病院とも連絡はしているようだしな……だがもう一度確認したい、本当にそのための見学だよな」

明久「もちろんだよ……当たり前じゃん」

塩田「わかった……すぐにやろう」

明久「アリガト。ねえ、センセイ、今日は雨で……空暗くてやだね」

塩田「あ? 急にどうした」

明久「いや……はやく、上がるといいなあって、そんだけの話よ……空まで暗いと嫌になるな」

塩田「そうか……晴れると、いいな」

明久「うん、そうじゃないと困るなあ……」

シーン4 それでも君と逢いたい

SE:電話の着信

塩田「はい……塩田です。どうしました? そんな慌てて……は? 加賀さんがいなくなった? その一瞬でですか……なるほど、すぐに対応しますっ、職員にも声をかけるんで、では」

SE:電話を切る

塩田「監視はあっちの病院の方が弱くなる、そこをつくとは……クソガキが」

SE:街頭のざわめき
SE:時計の音

春音「もうー、誘ってきたのあっちなのに……遅いなぁ……。というか、入院患者が外に出てデートっていいのかな……あんまり知識ないから分かんないんだよねぇ……うーん」

明久「はあはあ……ぐぇ……しんどい、電車ってこんなにしんどいんだ……」

春音「アキ! なんでそんなボロボロなのよ、大丈夫?」

明久「いやー電車というラスボスと戦ってきたばっかりだから、しょうがないんだよぉ」

春音「電車の混み具合に負けたの……? 今はまだマシだよ? 出勤ラッシュに遭遇したらどうするのよ」

明久「ミンチになった俺を大事に食ってくれ」

春音「きもちわるいこといわないでよぉ(笑いながら)」

明久「それよりもさ、ハル。俺お腹空いちゃったよ、食べようよー」

春音「まあ、お昼だしねぇ。パスタにでもしようか、うんうん」

明久「あーぱすたー、たのしみー」

春音「棒読み過ぎて、心配になるんだけど」

明久「大丈夫大丈夫、ハルと一緒ならどこでもいいよ」

春音「……そ、そう? まあそう言ってくれるなら嬉しいけど…」

明久M「体が濡れてしまったように重いし、動くだけでもしんどさで涙が出る……でもやっと、ここにこれたんだ……」

春音「どうしたのよぉ、アキ。そんなニコニコして」

明久「んー、そうかなぁ、気のせいだよぉ」

SE:足音
SE:時計

春音「お店、結構混み合ってて、ゆっくり出来なかったねぇ」

明久「ほんと、結構ハードだなって思ったよ」

春音「ほんとだよー。結局公園まで来なきゃのんびりできないとは……」

明久「懐かしいよねここ……ハルとよく遊んでいたっけ」

春音「そうそう、アキはさぁ、おいかけっこもしんどそうだし砂遊びでせきこむから……遊んでいたと言うよりは、話してたって感じだよね」

明久「そう、体弱かったからね」

春音「そういや、聞きたいことあって……めっちゃアキって服とか頭とか派手だよね。色合いといえばいいのか」

明久「そうかもー。白と水色以外の色を服に使ってるし、頭、紫だし」

春音「ほんと、派手(語尾笑いながら)南国の鳥でいそうだよね、そういうの」

明久「おーそうなのか、よく考えてなかったなぁ」

春音「なんで、白と水色は外してるの?」

明久「うーん、なじみのある色だからかなぁ……すごい飽きるまで見ていたし、空」

春音「空が好きなの?」

明久「いや……空しか見えないのが、俺の世界だから………」

春音「あのさなんか、ハードな話になっちゃう? これもしかして」

明久「いや、そんなことないよ……ぼっちのプロによるぼっちな世界講座だから」

春音「友達いないの?」

明久「いないよー」

春音「えー私は、私はそうじゃないの」

明久「はるは俺のトクベツ」

春音「え」

明久「友人なんて言葉じゃ足りなすぎる」

春音「やだ……ちょっと恥ずかしくなるじゃん」

明久「へへへ、やったぜ。まあ、そろそろ……タイムカプセル掘ろうか」

春音「うん、ちっちゃいけど言われたとおり、シャベル持ってきたよ」

明久「よし、完璧だ」

シーン5 世界を彩ったのは

SE:土を掘る

明久「あ、これだ……やっと出てきた……昔の俺ってどこまで深く掘ったんだろ」

春音「結構しっかり埋めてたねぇ、だからまあ掘り出されることなかったって感じだけど」

明久「そうだなぁ……じゃあ、開けようよハル」

春音「うん! ここを押せばいいはず……」

SE:かこっという音
SE:かしゃかしゃ(ビニール袋いじる音)

春音「ビニール袋にはいって……うわ、日記帳とか手紙とかド定番なの入ってる」

明久「それはハルが入れたヤツだね。未来に手紙を残すんだとか言ってたよ」

春音「懐かしい、つたない字だなぁ……」

明久「俺は、ハルと遊ぶときに使ってたサイコロとか入れたみたいだな」

春音「手紙とか残さなかったの?」

明久「……そういうガラじゃ無かったんだよ」

春音「えー、結構面白いのに―」

明久「まあ、いいんだよ、俺が見つけたかったのは……ああ、あった」

春音「指輪? ああ、おもちゃのだね……ブロックで出来てる」

明久「ハルは覚えてない? あの頃学校でプロポーズごっこがはやってて……おもちゃの指輪を渡す遊びをしていたことを」

春音「ああ、そんな遊びが……おませだなぁ……」

明久「そう、十年早いって遊びだよな……でも俺は当時、指輪を渡したかった子がいたよ……けど、自分のコトを考えたら、悲しませるかもと思って諦めた」

春音「それって急な転校していった件?」

明久「いや……俺の問題の方かな」

春音「アキの問題?」

明久「だからもし奇跡が起きて……再会が出来たら、渡したかったんだよ、この指輪を」

春音「アキ……どうしたの、顔色すごい真っ青だよ」

明久「ハル……この指輪を渡したかった……君は俺の世界に彩りをくれたんだ、今も昔も……」

春音「アキ、やめてよ、そんな死んじゃう前のセリフみたいなことを言わないでよ!」

明久「俺の人生って、何の意味があるんだろとおもったけど……きっとこのためにあったんだ」

春音「何言ってるの、アキ!!」

明久「ハル……大好きだ……」

SE:どさっと倒れる音

春音「アキ!!!」

SE:救急車の音(遠くからフェードイン)

シーン6 真実

SE:時計の音
SE:カップの置く音

春音「……先生、明久はどうなっているんですか? 彼は本当はどういう状態だったんですか」

塩田「……ぼろぼろだよ……どこもまともなとこはありゃしない、元から心臓が弱かったが……そこから二次症状もすすんで、心臓自らが動きをとめるか、それとも血管が詰まって止まるか、ほかの症状でどうにもならなくなるか……バリエーションがありすぎて、医者が匙を投げ出すと言われてもしょうがないだろう」

春音「なんでそんなこと、私に教えて」

塩田「(遮るように)教えたとして、君は何をするつもりだったんだ」

春音「それは……」

塩田「あわあわとうろたえるだけだったんじゃないか? 今も変わらず。そうなるのがアイツは嫌がったってのもあるだろうし……出来れば何も知らせずに、普通の人間として扱って欲しかったのもあるんだろうな」

春音「アキ……」

塩田「かっこつけすぎだな、百年早いといってやりたいくらいだ」

春音「うう……」

塩田「明久君はとりあえず一命はとりとめたが……医師としては面会謝絶を出さざる得ない。もう、あのガキのことは忘れろ……日常に帰れ」

春音「日常に……」

塩田「これ以上こっちに踏み込むと、痛いじゃすまないからな」

SE:椅子から立つ
SE:足音
SE:ドア開閉(大きめ)

春音「アキ、アキ……やだよ、このまま、終わるだなんて……嫌だよ……」

春音M「胸の奥からこみ上げる切望、渇望……アキに会いたいという、単純な願い……この気持ちをなんと表現すればいいのだろう……あまりに苦しくて……甘くない……それが私の恋だった」

SE:時計の音
SE:ドアの開閉
SE:足音

塩田「おい、起きろ……目覚めたって報告受けてんだ、クソガキ」

明久「ああ、うん……バレちゃったか……」

塩田「なんであんなバカやった、死ぬとこだったぞ」

明久「えー、女の子とのデートだよぉ、行かないわけないでしょ」

塩田「こんな時までふざけやがって……いいか、お前は死ぬとこだったんだ! 死ぬってどういうことかわかるか! 戻って来られないことなんだぞ……お前はなんも決めてなかったろ、どう生きていくのか! どう死んでいくのか! 人より何倍も考える時間があって、何倍も空を見て、考えることを放棄をしていた。そんなヤツが、外でデートだ? 医者がそんな自殺行為、認めるわけないだろ」

明久「俺は……けほっ、命かけても良いと思ったよ。それくらい、大事だった……」

塩田「お前……」

明久「春音に会いたい……どうしても会いたい……先生、いつだったら会えますか?」

塩田「それは無理だ、ご家族以外は面会謝絶にする……とても彼女と会わすわけにいかない」

明久「お願いだよ、会わせてください」

塩田「馬鹿野郎、自業自得だ。なんでそこまで会いたいんだよ」

明久「へへ……俺の、最初で最後の恋だから……会いたい……」

塩田「無理だ……それとやはりお前の治療のために、転院の話も出ている……彼女のことは諦めろ」

SE:ドアの締める音

明久「ハル……どうしてるんだろ」

春音M「世界は都合がよくない、覚悟なしでは触れられないこともある」

明久M「それでも止められなかった、隠しても何をしても、君に恋をした」

春音M「私は今、決断を迫られている」

明久「俺はハルに」

春音「私はアキに」

明久(右)「会いたい」
春音(左)「会いたい」

シーン7 手を取り合って

SE:車を出す音
SE:走行音

塩田「もう、20分ってとこか……転院先まで」

明久「すごいよね……あっという間じゃん、転院……そんなに俺って追い出したかったの?」

塩田「ノーコメントだ、と……ここ寄ってくぞ」

明久「何ココ、駐車場じゃん」

塩田「タバコを一服させてくれ、ちょっと出てくる」

明久「搬送中にそれって、すげー不良医師じゃん、アンタ」

塩田「うるさいな。医者自ら搬送するなんてあり得ないんだ、ボーナスつけさせろ」

明久「はいはーい」

SE:車のドアの開閉音

明久「あー……しんど、はやく休みたいな……」

明久M「また、空ばかりを見る生活に逆戻りだ、タイクツで苦しいだけの」

明久「はあ……ん?」

SE:こんこん(ガラスを叩く音)

明久「あっ……!」

SE:車のドアを開ける

春音「やっほ、アキ」

明久「ハルじゃん……なんでこんなところにいるんだよ!」

春音「タレコミがあって、来ちゃいました。ここにアキがいるって」

明久「タレコミって……ああ、なるほど」

春音「タバコの時間、少し長めだそうだよ」

明久「なんだよ、かっこつけやがって……」

春音「ふふふ、男の人って皆そうなのかな……アキも告白したっきり倒れちゃうし」

明久「うっ」

春音「言うだけ言って……会えなくなるってずるくない?」

明久「ううっ……しょうがなかったんだよ」

春音「そうだね、でもとっても哀しかったから……約束して」

明久「約束?」

春音「アキの最後まで、大好きでいるから……一緒にいよう」

明久「ハル……」

春音「ダメかな?」

明久「ダメじゃない……一緒だよ、最後までずっと……」

SE:抱きしめ合う音

明久「愛してる」

SE:時計の音

塩田「我ながら、バカだと思うよ……こんなことするなんて……あの青い恋が無残な最後になるって分かってるのに……いや、そうじゃないかもとか言うんだろうな君は……はは、心底優しい……そう言うヤツだったな」

塩田「(軽くため息)どうか、二人に祝福を……せめて、長くお幸せに……なんてな」

 

上演してもらいました


【声劇】病弱男子と元気女子の恋話【新作台本お披露目会】

 

規約・著作権は私が持っています。無断転載、盗作はないとおもいたいですがやめて下さい。配信(無料)は、作者名と台本URLをのせてくれたら大丈夫です。有料配信はやめてください。

こちらの作品で、ボイドラその他諸々をつくりたいということがありましたら、ツイッターのDMなどで一報をお願いします。

 

【声劇台本】バ美肉ファンタジー(男性1:女性2:どちらでも1)

忍(しのぶ)♂ 年齢 20代前半
男の声をした美少女、中身はただの大学生

素直(すなお)♀ 年齢 10代後半
可愛い声のマッチョマン、イケメン

クレア   ♀ 年齢 20代前半
ママ味溢れる司祭様

スーさん 性別不詳 年齢不詳
うるさいスマホ

 

スーN「ある日の朝、日本のどこかで一人の青年が道を行く」

忍「はぁーあ、なんかいいことないかなぁ」

スーN「彼の名は忍、しがない大学生だ、なんの変哲もないただの人間、
    強いて言うなら中性的な名前にコンプレックスを持つどこにでもいる思春期の男だ」

忍「さっきから聞いてりゃ失礼なナレーションだなぁおい!?」

スーN「あ、よそ見なんてしてると危ないですよ、ほらトラックが」

忍「へ?う、うわぁああああ!?」

忍M「視界がゆっくり流れていく、あぁこれが走馬灯って奴か、
   終わりって本当にいきなりなんだな・・・」

クレア「勇者よ、まだ死ぬ時ではありません、さぁ体をそのまま委ねて・・・」

(SE鳥のさえずり、なければクレア役のさえずり)

忍M「何か、聞こえる・・・まさか俺、生きてる・・・?
   けどダメだ、喉が渇いて仕方が無い・・・」

忍M「ここはどこだ、森の中?俺はどこまで飛ばされたんだ・・・、
   あ、泉だ、水、水が飲みたい・・・」

スーN「彼が水を飲もうと泉を覗き込むと、そこには絶世の美少女が映り込んでいた・・・」

忍「まさか、これが俺?って声はそのまんまかよ!?」

スー「相変わらず騒がしい方ですね、私の主は」

忍「っ、誰だ!」

スー「私ですよ、っと言ってもこの姿では分からないでしょうけどね」

忍「・・・俺の、スマホ?」

スー「おぉ、なんて察しのいい!いややはり四六時中一緒にいただけの事はありますねぇ!」

忍「なんでスマホが宙に浮かんで喋ってんの・・・やっぱりここ死後の世界なのか・・・?」

スー「え、何を仰るウサギさん、そんなはずが・・・って本当に私スマホのまんまですねぇ!?」

忍「うるさいなぁ、どっからどう見てもスマホだよ、ってかそうだよ俺喉渇いたんだよ」

スー「流石は誰とも馴染めないのに仕事の順応性だけは高い主、この状況にも順応が・・・」

忍「失礼極まりないなお前!?そしてやたら俺に詳しいなぁ!」

スー「それは主のスマホですからね!片時も離さなかったあのスマホさんですよぉ!」

忍「んなバカな、それが本当なら」

スー「あ、そんな乱暴に掴まないで」

忍「カバー外したところに・・・あぁ!?」

スー「そうプリクラが、初恋の・・・!」

忍「うわぁああああうるさいうるさい!」

スー「信じて頂けましたか主」

忍「超信じた、なんて悪趣味な夢だ・・・」

スー「夢なんかじゃありませんよ、これは現実です、そして主は美少女に転生したのです!」

忍「声はそのまんまだけどなぁ!」

スー「まぁまぁ、とりあえずは現地民を探しましょう、
   土地勘の無い私達だけでは道に迷ってしまいます」

忍「いやマップアプリ開けよ」

スー「はっ、その手が!っと言いたい所ですが、
   ここにはGPSは愚か4Gも3Gも飛んでないんですねぇ」

忍「って事はお前まさか・・・」

スー「えぇそうです、コミュニケーションの取れるスペシャスマホです!」

忍「電源切るか・・・」

スー「あぁ待ってそんな殺生な!寂しくないんですか心細くないんですか!」

忍「・・・うるさいけど一人になるよりはマシか」

スー「そうでしょうそうでしょう」

忍「そんじゃ現地民捜しに行くぞ、スーさん」

スー「はぅ!主が遂に私に名前を!?」

忍「あーうっさいうっさい」

スーN「それから数刻・・・」

忍「いやなんだこの森!なんでモンスターなんかいんの!?」

スー「ほら言ったでしょう、ここは異世界だって」

忍「いや聞いてねぇけどぉ!?」

スー「あらそうでしたか、そう私達は異世界転生したのですよ、
   今流行の異世界転生ですよー」

忍「じゃあもうちょっと不思議な力とか持ってろよ、なんで可愛いだけなんだよ俺!」

スー「可愛くなっただけいいじゃないですか!私浮いて喋れるだけですよ!」

忍「いや充分だろ元々ただの無機物なんだから!」

スー「それもそうですね!」

忍「もうヤダこいつー・・・」

スー「む、私のすれ違いセンサーが気配をキャッチですよ!」

忍「はぁ?」

スー「こっちです、着いてきてください!」

忍「あ、待て勝手に行くなよ!」

スー「っと、ほら、あそこです、見て下さい」

忍「なんだ・・・って人だ、しかも筋肉モリモリでデカい斧持ってる」

スー「超強そうじゃ無いですかイケメンだし、しかも私のソーシャルセンサーが訴えかけています、
   あの人はいい人ですイケメンだし、間違いありません」

忍「さっきから変なセンサー働きまくりだな、そしてイケメン押すな・・・」

スー「いいからいいから、まずはアタックですよ、色仕掛けで味方にしてしまうのです」

忍「いやこえぇよ・・・、でもこの世界の情報は欲しい・・・、
  えぇい、なんとでもなれ・・・!すみません!」

素直「ひぃいいい!男の人ぉおおおお!?」

忍「いや声可愛いなぁおい!」

素直「・・・あなたも声に似合わず可愛らしいね?」

スー「隠れ切れてませんよ、はみ出しまくりです」

素直「うるさいなぁ!?私だって好きでこんな見た目してるんじゃないんだからね!?」

忍「え、って事は」

素直「そうだよ、私、今はこんなゴツい戦士だけと、本当は超絶美少女なんだから」

スー「バレない事を良いことに言い放題ですね」

素直「よしそのうるさいスマホ壊そう」

スー「ひぃ!助けて主!」

忍「少しは懲りろお前」

スー「味方不在ですか私!?」

素直「よーし、覚悟しろー!」

クレア「お待ちなさい素直」

素直「っ、司祭様!ごめんなさい!」

クレア「もう、探して保護して下さいとお願いしたはずなのに・・・」

スー「・・・ママ」

クレア「え、なんですか?」

スー「ママだ・・・」

忍「いや、お前その即オチは止めろよ」

スー「はっ、これはいけない、私はスマホのスーさんです、
   美しいあなた、お名前をお聞かせ願えないでしょうか」

素直「え、美しいなんてそんな、私は素直って・・・」

スー「筋肉ダルマは黙ってて下さい」

素直「傷つく!」

クレア「まぁ素直の筋肉は確かに美しいですからね、それはそうと、
    私はクレアと申します、ようこそいらっしゃいました、勇者様」

スー「え、私勇者だったのですか!?」

クレア「いえ、ちょっと妖精さんは静かにしててもらってもいいですかね・・・」

スー「はいママ」

忍「急に素直だな」

素直「私はずっと素直だよ?」

忍「いや、ややこしいなぁ!?」

クレア「こほん、よろしいですか?」

忍「あ、ごめんなさい」

クレア「あなたです、そこにいらっしゃる男の声帯持つ美少女のあなた」

忍「改めてそう聞くとパワーワードだなおい」

クレア「・・・お名前は?」

忍「ひぃん、忍です!」

クレア「忍さんですね、お待ちしておりました、あなたこそ伝承の勇者様」

忍「伝承って・・・?」

クレア「世界に闇訪れし時、鈴の音の声を持つ筋骨隆々なイケメン現るだろう」

忍「何言ってんだ」

クレア「そしてその者、妖精従えし男の声帯持つ美少女を導くだろう」

忍「いやだから何言ってんだ」

クレア「そして彼の者こそが勇者なり」

素直「何度聞いても最初と最後しか耳に入らない」

忍「すげぇ同感」

スー「つまり私は妖精なのですね!」

クレア「えぇ、まさかそんなに平べったく四角い妖精さんだとは想像もしませんでしたが」

素直「喋るスマホが妖精とか何を信じて生きていったらいいの・・・?」

忍「メッチャ可愛い声のマッチョマンに言われてもなんも説得力がないんだよなぁ」

素直「その言葉そっくりそのまま返してあげる、男声の美少女さん」

スー「不毛な争いは止めましょう、戦士と勇者、ママが話したがってます」

クレア「私は司祭のクレアと申します、間違っても母親などではありません、いいですね」

スー「イエスマム」

忍「大分失礼だな」

クレア「まぁ構いませんよ、人ならざる物に機微は期待していませんもの」

素直「司祭様はとても大らかな方なんだよ、凄い包容力なの」

忍「それはなんとなく伝わる」

クレア「ふふっ、それはよかった、忍さん、
    この世界に来たばかりで分からないことだらけでしょう」

忍「まぁ、そうだね、勇者って言われても全然ピンとこないし」

クレア「それはそうでしょう、そこの素直も同じでした、三日三晩は泣きはらしてましたし」

素直「筋肉モリモリマッチョマンとか何も嬉しくないよぉおおおおお!」

クレア「殿方から行為の目を向けられない姿、とても羨ましいと思うんですけどねぇ・・・」

忍「美人は美人で大変なんだな・・・」

クレア「お疲れでしょうし、まずは教会へ向かいましょう」

素直「話の続きはそこでゆっくりね、ぐすん」

スー「あぁママのお家に行けるなんて、私幸せです」

忍「俺はこんなんが自分のスマホで悲しいよ・・・」

クレア「では素直、先頭はお任せします、行きましょう」

素直「うん、分かったよ、それじゃ着いてきて!」

忍N「こうして、可愛い声のマッチョマンと、ママ味溢れる司祭様、
   スマホ妖精と俺の旅が始まるのだった・・・」

スー「そう!忍達の旅はまだまだ続く!続くったら続く!」

忍「いやそれ打ち切りの常套句だよねぇ!?」

 

規約・著作権はリシテアが持っています。無断転載、盗作はないとおもいたいですがやめて下さい。配信(無料)は、作者名と台本URLをのせてくれたら大丈夫です。有料配信はやめてください。

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【声劇台本】ある夏の日、時間はくるくる、混ざり合う(男性1:女性1)

女の子(高校生)……現代人、60年前の戦争を学校で学習しなきゃいけなくなり、戦争資料館に来ている。だるくて、個人でうごくことも多い、寂しいところもある。

 

男の子……60年前の同じ場所で援農で働いている少年。軍国教育のもと活発にいきてるが、空腹に悩ませてる。自分もいずれ戦争に行き、死ぬんだろうなぁと考えてる。

 

孫……男の子の孫(男の子と兼役)

 

シーン1

セミの鳴き声

女「あー……だる……暑いし、夏休みになんでこんなところに」

女M「私は、ため息をついた。私は同級生と引率の先生と共に、戦争資料館に来ていた。平和学習ってやつだ。戦争が遠ざかる時代に少しでも今の平和の大切さを……とかなんとか」

女「昔のことに思いをはせるとか、だる……いやそれより、集団行動がめんど……」

女M「学校は嫌いだ、どんなときだって集団行動を求められる。一人で行動させてくれって思うのに……同級生だって、私が集団行動に嫌悪をしてることを知ってるから、声もかけたくないだろう」

きゃいきゃいと騒ぐ声
セミの鳴き声

女「やっと、昼ご飯か……食べよ食べよ……」

女M「私は資料館の裏にある木陰に行った。蝉時雨がやばいだろうと思ったけど、思いのほか静かだ」

女「やっと……休め……あ?」

男「うう……腹減った……」

女「ちょっとあんた、大丈夫……茹でエビみたいにくたばってるじゃない……」

男「えび……えびぃ……そんな贅沢品、たべたいなぁ……」

女「は? スーパーで売ってるでしょ」

男「すーぱぁ? ってなんだろ……もう、どうでもいいや、腹減った……」

お腹の鳴る音

女「なんかぼろぼろじゃん……そうだ、うちのお母さん、めっちゃ弁当に手間かけるんだよね……ちょっと分けてあげる。どうせ、一人じゃ食べきれないし」

男「え……なに……俺、死ぬ前に夢でも見てるのかな」

女「ばっか、何言ってるのよ。ほら……おにぎり、おかかだけどいいよね」

男「こ、こめ!!! くう! くう!!」

女「めっちゃ食いついてきた、コワ……いや、なんでもない」

男「お前、いいのかよ、米をくれるなんて……え、そんなに豊かなのか」

女「米ってそんな貴重品だっけ……むしろ米あまりの話を聞くけど……」

男「はああ? お前何言ってるんだ。米はお国に拠出してるだろが」

女「やだ、なんか戦争時代っぽい話やめてよ。ただでさえ、これからのこと思うと頭痛いのに」

男「は? 戦争してないのかよ」

女「私にとっては、静かな戦争みたいな日常だけどね……はい、からあげ」
---------------------------------------------------------------------------------

からあげを噛む音

男「はう、うめ……うま……」

女「なんかさー……まさかと思うけど、戦争マニアなの?」

男「え? まにあ?」

女「戦争について興味をもったりして、調べたり知識をもってるひといえばいいのかな。なんかすごいなりきりに見えるよ」

男「俺のとこで戦争を考えないヤツなんていない。皆一丸で戦わなくちゃならないんだよ」

女「あんたさ……顔がやばいよ、いったいどうしたの」

男「あ、ごめん……なんだろ、すごい感覚を違うというか。君って同じ人なのに、全然違うって言うか。変なの」

女「それは……良く言われる、学校で全然集団行動とらないしね」

男「それっていけないことじゃないのか。俺のとこは皆、おんなじように動いてる……非国民っていわれたら大変だからな」

女「なんかすごいなりきりだね……マジで戦争時代の話を聞いてるみたい」

男「戦争時代って、戦争中だろ……っていうか、ここどこなんだろ。俺、援農(えんのう)で畑に水やりしてったのに。君だって、勤労奉仕しないのかい、工場勤務してるんだろ? いや、勤労奉仕してるやつでこんな豪勢な弁当もってたら……あぶないって……非難されるぞ」

女「ちょ、ちょっと待って……援農ってあれだよね、農家の援助をすることで、戦争時代の子供らがやってることでしょ。さっきの授業で説明あった。特にここらは大きな畑があって……」

男「そうだよ、働いてたんだけど、お腹がすごく空いててふらっと倒れたんだけど」

女「……なるほど……なるほど」

ピキーンという感じの効果音
鈴の鳴る音でもいいかも

女M「やばいことになっている気がする。この男の子は本当だ。本当に過去の人間だ。戦争時代からたまたま目の前にタイムスリップしてきてる」

男「どうしたんだよ、神妙な顔をして」

女「ドーナツ食べたい人」

男「はい」

女「プレーンだけど、どうぞ」

5秒の間
蝉の音

男「うわぁ……甘い……こんな砂糖の味、いつぶりだ……」

女「それはよかった……」

男「こんなに恵んでもらったのに俺、返せるモノがないんだけど」

女「いいんだよ、大変なんだろうし」

女M「戦争はとっくに終わって、それは敗戦で、君が苦しんで頑張っている日常は、ある日瓦解する……未来人としては、そんな日常に帰んない方が良いと思う」

男「そっか、ありがとよ! これで午後作業もがんばれるわ」

女M「けれど、その言葉は、傲慢だ。直感的そう思った。彼の人生に私は介入できてしまう。だけど運命に介入して、果たして私は正しいのだろうか」

女「なんか、超がんばるね。そういえばそんなに働いたりしてたら、遊べないんじゃない?」

男「遊んでるよ、上級生が義勇兵になって下級生の俺らとチャンバラするんだ、俺ら、敵兵になっちゃうけど……」

女「あー、年上がかっこいい役目なんだ」

男「そうなんだよぉ。でももっと大きくなればかっこいい役になれるから!」

女「楽しみって感じじゃん、いいね、私もう何年もそんな遊びしないな」

男「えー、人形遊びもしないのか」

女「そんな年じゃないしね……なんていうか、あんま人とつるまないの」

男「……なんで?」

女「少なくともうちの教室ではやりたくないの、気持ち悪いから」

男「えー、よくわかんないな、仲間とかじゃないのか?」

女「君のとこだとわかんないかもだけど、うちの学校、いじめとかすると起こすとそれがとっても学校の成績に影響するの。しめつけきついのよ、だから皆仲良しごっこしてる、なんかさ、感情を堪えて生活しなきゃ行けないんだよ全員で。めっちゃ嫌だよ」

男「はあ……なんか、すごい分かんないけど……君の顔を見るとよっぽど辛いんだな」

女「そ、そんなことないし、変な顔をしてた?」

男「辛そうだった……そっか、恵まれてるみたいだと思うけど、違う戦争を味わってるのかなぁ……」

女「そうかもね……」

男「俺の姉ちゃん、バカみたいに人いいから、今度会わせてやるよ! もしかしたら友達になれるかも」

女「ははっ、まさか友達候補の紹介うけるとは」

男「だって、見放せないし。なんか見放せない」

女「そんな、じっと見ないでよ」

男「ごめんごめん」

女「……でも、ありがと……強がってるつもりは無いけど、ちょっとしんどいときあるし。ありがたいよ、優しいじゃん」

男「へへへーもっと強くないといけないとおもうけどな! 敵兵を倒すために!」

女「……君は、十分強いよ」

男「そうかな、まあいいや、よしそろそろ、いかなくちゃ……またな」

女「またね……また会いたいな」

男「うん、周りに俺に年上の友達が出来たって自慢しなきゃ……!」

女「え……それって」

男「じゃあな!」

女「あ……きゃっ」

強い突風が吹く
蝉の声
遠巻きに聞こえる人の声

女「もう、いない……」

蝉の声が強まる

女M「少し……未来の話をしよう。この資料館のある場所には、昔大きな畑の持つ農家の家があった。だけど戦争末期、空襲で焼け野原になり、大きな被害が出たという。私と出会った少年も……恐らく……きっと……」

蝉の声が弱まっていく
(10秒ぐらいかけて)
足音が鳴り響く。

女「次、語り部の話を聞くのかー、これでやっと終わる……」

椅子に座る音

男「すいません、本日祖父が語るはずだったんですが、ちょっとぎっくり腰で……ボクが代理で祖父の話をしたいと思います」

女「え……」

男「まずはそうですね、当時の少年の祖父は、空腹のあまり、風変わりな夢を見たことあるらしいんですよ……ドーナツを年上のお姉さんからもらったって……」

女「なに、語りついでるのよ……」

女M「私は思わず微笑んだ、この話を聞いたら……彼とそっくりに成長した孫に話しかけに行こう。……友達に、会いに行くんだ」

 

ボイドラあります

youtu.be

 

規約・著作権は私が持っています。無断転載、盗作はないとおもいたいですがやめて下さい。配信(無料)は、作者名と台本URLをのせてくれたら大丈夫です。有料配信はやめてください。

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【男性向け】ひぐらしが鳴いた頃、先輩のことが大好きな後輩と【シュチュエーションボイス台本】

女の子……先輩と主人公(聞き手)を呼んでいる。いつも一緒にいた。しかしある年の夏、交通事故でなくなってしまう。そこからずっと、二人の思い出の場所で彷徨ってる。死んだことはわかっているが、わかってないようなフリをしている。

SE:ひぐらし
SE:足音(フェードアウト)

あ、せんぱーい、久しぶりですね……ずっと見かけなくて心配しましたよ

今日はどうしたんですー、後輩の私を心配してきたとか?

先輩すっごい心配性ですもんね

(3秒の間)

はあ……今日もひぐらしが鳴いてますね……夏も終わりだ

なんか、花火大会やるらしいですよ、行きましょうよ

ふむ……そんなことよりちょっと歩きたい……全然ですよ、むしろ嬉しい!

SE:足音

先輩……スーツ似合ってますね

なんでそんなに似合うんですか? 

若いのに着慣れてるとは……まさか、起業家なのかな

お、そうなんですか……サラリーマンなんですか

あれぇ……私の中だと

学生服を暑苦しそうに着てたんですけどね

夏休みの宿題、終わらせました?

また後輩に……手伝わせたりとか

ふふふ、偉い! 一人でやりきるとは、さすが先輩です 

……それにしても先輩、背が伸びましたね

あの時は、私より小さくて

なんだか私の方が先輩って感じだったのに

ふふ、そうでしたねー

私より大きくなってみせるんだって意気込んでましたもんね

がんばったんですねぇ

えらいえらい!

もうもう、信じてくださいよ

ウソなんてついてないんですから

もうもう、嘘つきっていうなんてひどいなぁ

こんな善良な後輩が、どこを探したっていない

そんなわけ、ないじゃないですか

SE:足音(とまる)
SE:ひぐらしは継続

ああ、でもウソをつきました

うそをついたことがない、なんて、うそでした

少し、足つかれました?

(囁き)あそこ見て

たんぼのあぜ道、奥に湧き水の出るところがあって

足をひたすと涼しいよ

いいじゃない、悪い人になっちゃえ

私は先輩が疲れないことの方が大事だし

イイ子でしょ

私は、先輩のイイ子だけになりたい

本音ですよーほんとですって―

SE:砂利道の足音
SE:ひぐらしの声

うさぎーおいしーかのやまぁ

絶対いましたよね、うさぎがおいしいって言い出すヤツ

SE:足音(ストップ)

嫌いだったな、そういうの

でもそれは……不真面目がよくないって思う私だけで

まわりの気持ちを考えたこと無かった

SE:水に足を入れる音(ぽちゃん

先輩、そんな私の側によくいましたよね

変わってるって、思いましたよ……ほんと

SE:ひぐらし(低めの音量)

しかも通う塾の教室まで同じとか

なんか一緒になる機会をお膳立てされたみたい

帰り道のアイス、おいしかったなぁ

数学苦手なこと、つっこんでくるから……先輩、そこはいじわるだった

あと、あと……

一緒にいて楽しすぎた……

最悪だったな、そこは

あの年の夏休みが終わったら、転校して

もう先輩に会えなくなるのに……

本当、バカみたい

でももっと、バカなのは……先輩とお別れして……それで……

車に当たって死んだ私

だけど、毎年先輩は私に会いに来てくれる

大きくなっても、大人になっても……

きっとさ、いい人にも出会えたよね

生きていたら見られなかっただろうね

死んでるからこそ、今の先輩に会える、皮肉だね……

そっか、そうなんだ……来年からは遠くに……

先輩、お別れをきちんというなんて偉いです!

私は死んだあの日まで、お別れのこと言えなかった

また明日もいるよって顔をしてウソをついてた

ああ、成仏しなきゃなんだろなぁ……なんかピンとこないけど

私は私のことを考えなきゃ、なんだろね

でもそうだとしたら、私ちゃんと言わないとな……

(ささやき)先輩、私ほんとに……大好きでしたよ

(ささやき)遊んでくれて、ありがとう

SE:ひぐらし(一気に高く)

読み上げた動画あります


【男性向け】先輩がダイスキな後輩と甘々散歩【シチュエーションボイス】

 

 

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