蒼のウィステリア

藤色雨とリシテアの台本や情報をまとめています。

こちらのページについて

いろいろと見るところがあるので、このページから

見たいモノにとぶといいかもしれません。

二人の自己紹介

はじめまして藤色雨と申します。

こちらのページは私、藤色雨と創作仲間のリシテアの台本や情報をまとめたページになっています。Vtuberもしてますので、チャンネル登録お待ちしてます。

 

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リシテアの台本置き場

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藤色雨の台本

 

台本利用規約

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声劇

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シチュエーションボイス

 

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朗読

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藤色雨が制作した頒布物(台本・小説などの置き場です)

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藤色雨のDLsiteで頒布している音源のリンクです

(音源に興味がでたら是非ともDLしてね)

 

声劇台本【わたし達、こうして出逢いました】(作者・リシテア・フォン・ツアベル)

青木♂ 30歳ほど
新郎とは小学校からの友人、同窓会気分で来たら知り合いが一人もおらず、
気まずくなって隅っこの方で一人飲んでた。


高村♀ 30歳ほど
新婦とは幼い頃からの友人、地元が遠方という事もあり知り合いが一人もおらず、
会場をふらふらしていた所を隅っこに寂しそうな男を見つけ、絡みに行く。


(結婚式披露宴、グラスを持ち壁に背を預ける青木)

青木「はぁ…、一人くらい知ってる奴来るだろうと思ってたんだけどなぁ…」

(青木会場を見渡す)

青木「顔見知りが新郎だけとはな、はぁ…」

高村「こら、人の晴れ舞台だぞ、何辛気臭い顔してるのよ」

青木「うぉっ、ごめんなさい!」

高村「あははっ、そんなマジで謝らないでください、
   冗談みたいなもんですから」

青木「それならよかった、いや俺も良くないとは思ってるんすけどね」

高村「なんかあったんですか?もしかしてあの子の事好きだったとか?」

青木「ぶっ、そんな訳ないでしょ、そもそも新婦さんとは初対面ですわ」

高村「それは失礼しました、そしたらどうしたんです」

青木「いやぁ、知ってる人いるかなぁって気軽な気持ちで来たらさ、
   あいつしか知り合いいない訳」

高村「あー、新郎新婦は色んな人とお話するからね、
   独占する訳にもいかずって」

青木「そうそう、いやぁ、参っちゃった」

高村「分かる分かる、参っちゃうよね」

青木「おや、その口ぶりは」

高村「ご察しの通り、私もその口、知り合いあの子しかいなかったの」

青木「なるほど、お姉さんもお一人様と」

高村「高村」

青木「え?」

高村「お姉さんじゃなくて高村、見た所似たような世代でしょ、
   私の方が年上みたいな言い方やめてもらえますー?」

青木「あはは、それは失礼しました、そしたら俺の事も青木って呼んで」

高村「青木くんね、それじゃお一人様同士の出会いに乾杯しましょ」

青木「やな乾杯だなぁ、新郎新婦の未来にでいいじゃん」

高村「それもそーだ、それじゃ」

青木「乾杯」

高村「乾杯」

青木「はぁ、この酒美味しいなぁ」

高村「お、流石に味くらいは分かってたぞ」

青木「うるへぇ、改めましてだよ」

高村「またまたー」

青木「さてはからかい好きだな」

高村「ムードメーカーって言ってちょうだい」

青木「そういうのは自分から言わないもんなの」

高村「最初は人から言われてたもん」

青木「はいはい、そういえばさ」

高村「ん?」

青木「高村はあの子と古い知り合いなの?」

高村「そーよ、地元が一緒なの」

青木「あぁじゃあ今日は北の方から」

高村「ううん、私も上京組」

青木「お、そうなんだ」

高村「新郎さんは生まれも育ちも関東だったよね」

青木「そうそう、あいつとは小学校から一緒でさ」

高村「あはは、そりゃ同級生来るって思うよね」

青木「そうそれなんだよ、みんな仕事で忙しいんだってさ」

高村「青木くんは暇人?」

青木「慶弔休暇取ったんですー、ニートみたいに言わんといでください」

高村「ごめんごめん、それもそうよね、綺麗な礼服着てるし」

青木「おーこれ高かったのよ、高村さんもドレス似合ってるじゃん」

高村「そーこれ高かったの、一目惚れで買っちゃった」

青木「いいじゃん、巡り合わせって感じで」

高村「そう言って貰えるとこの子も喜ぶわぁ」

青木「あはは、中身は喜ばないんかい」

高村「嬉しくない訳ないでしょー、野暮なこと言わさないでくださいー」

青木「ははは、仕返しだ」

高村「そういうからかい方はずるいと思います」

青木「失礼しました、いやぁ、今日は来てよかったわぁ」

高村「美味しいお酒になった?」

青木「お陰様で、そっちも少しは楽しんでくれた?」

高村「えぇお陰様で」

青木「…なぁ」
高村「…ねぇ」 (二人同時に)

青木「あーお先にどうぞ」
高村「あーお先にどうぞ?」 (二人同時に)

高村「あはは、私たち気が合うんじゃない?」

青木「ははっ、そうだな、そしたらせーので言ってみようぜ」

高村「えーそこで合わなかったらどうするのよ」

青木「それはそれで面白いからあり」

高村「もう、本当に野暮な人、まぁいいけど」

青木「うし、それじゃ行きましょ」

高村「そうね、行くよ、せーの」

青木「連絡先交換しませんか?」
高村「連絡先交換しませんか?」 (二人同時に)

 

規約・著作権はリシテアが持っています。無断転載、盗作はないとおもいたいですがやめて下さい。配信(無料)は、作者名と台本URLをのせてくれたら大丈夫です。有料配信はやめてください。

こちらの作品で、ボイドラその他諸々をつくりたいということがありましたら、ツイッターのDMなどで一報をお願いします。

 

【女性向け】甘え方講座する幼なじみ【5分くらいのシチュエーションボイス】

シナリオの取り扱いは、このブログ内にある規約をご覧下さい、

 

幼なじみ……成人済み男性。あなたのことが好き。だけどそれを口に出せないで何年も経過している。

 

【玄関】

 

おいおい、いきなりやってきてどうしたんだよ

 

そりゃ驚くって

全くいつも行動が唐突なんだよなぁお前は

 

もう付き合ってれば慣れるけど

どうしたんだそんな顔して、泣きそうっていうか、1回泣いただろ

 

(ため息)

入れよ……大丈夫、今日家族いねえよ

2人きりだ

なにそんな顔してんだよ

今更俺とお前の関係、何があるわけねーだろ

幼なじみ何年やってると思ってた

 

【室内】

 

はいこれチューハイ

……たまたま冷蔵庫にお前の好きなチューハイがあったから持ってきただけだよ

別にたいした意味ねーから、そうだよ

いつも常備じゃない、たまたまだ

 

で、何があったんだ

……ちょっと想像ついてるけどよ

 

うん、なるほどねー

またふられたのか

いやお前のふられっぷりも見事なもんだわ、ある意味

 

なんだひどいよー……って、事実だろう

俺に対して見栄張りの意味は無いっつってんだろう、それで、今回のはなんだ……理由

 

甘えてこないから俺いなくても平気って思われた

 

はあー、そこ気づかないのか、まじくそじゃね

 

……何でもない

 

うん……うん……

 

ちゃんとやろうと思って接してたけど……

あーもう、オラオラ泣くなー

 

泣いてもいいけど、ちょっと俺が辛いだけ

やっぱ幼なじみに泣かれるのは困るって言うか

俺も何も思わないわけじゃない

 

そうだなぁ……甘え方というか甘えておけばもうちょっと続いたか、まだマシだったかもしれねぇなぁうん

 

ちょっとやってみるか

甘え方講座みたいなの

俺協力してやってもいいよ

恥ずかしがる必要ねーだろ

 

お互いの事は結構知ってるつもりだと思うぞ

いや割と何でも知ってるかもしれないなぁ

 

さっ、て……いいだろ、やるぞ

お前は相手と何したかったんだ?

どうしたかった?

何でも言ってみろよ

今の俺は幼なじみじゃない

お前の好きだったやつだと思えばいい

 

俺はお前が甘えられるようにするための人形だ……

 

うん……うん……手繋ぎたかったんだ

 

やっと言ってくれた

じゃぁつなごうって……

何普通につなごうとしてんだよ

俺たち恋人同士だろ、そういうつなぎ方あるじゃん

 

指を絡めていかなきゃ……意味なくない?

ぎゅっと握りたかったんだろう

こうやって

何も恥ずかしがることねーよ

 

俺はお前の好きなやつだ

目をつぶれよ

そしたら俺だとわからなくなるだろう

お前の好きな相手の顔、浮かべろよ

 

……あー俺ってほんといいやつだよなぁ

 

チューハイ1杯でぶったおれちまった

どんだけ泣いてたんだろうなぁ……こいつ泣いた後だといつもこうだし

 

俺の前で、すやっとして……俺が狼だったらどうするんだよ、パクッと食っちまってるぞ

 

傷つけたくも嫌われたくもないからそんなことしねえけどよ

 

あーかわいいなーほんと可愛い

 

初めて会った時から目が離せなかったもんな

 

どこかの誰かと幸せだったら

ある意味あきらめがつくもんだけど

いつまでたってもふられっぱなし

 

本当に好きなんだよ

どうやったって届かないかもしれないけどな

 

それでも……愛してる

 

(キス音)(なくてもいいです)

 

はぁ、ほんとう、俺って……

ずるい奴



【女性向け台本】魔法使いな店主と雨宿りで癒される

魔法の使えるお店の店主とシチュエーションボイス

店主……「白木」という小さな居酒屋を切り盛りしている、実は魔法を使えるのだが、それは聞き手である主人公だけが知る秘密。絵画にも詳しい

イントロダクション(あらすじ)

ある雨の日。自分の生活・精神幸福度高くないなと思っていたあなたは、知り合いの店主のいる店に向かう
店主の店は珍しく閑古鳥、雨がひどくて客が来なかったという
店主は実は魔法使いだったりして、君一人だけだからと、普段のもてなしから、愚痴聞き、絵画解説、魔法まで見せてくれる

台本の
、と。にあたる部分は全角スペースであけてます。 

シーン1 やあやあ いらっしゃいませ

SE:どしゃぶりの雨
SE:カウベル

はい……いらっしゃいませ……って 君か

こんな雨の日にお客なんて 珍しいとは思ったが……

まあ 君だとしたらこちらもうれしいよ

彼氏と喧嘩をして 逃げてきたのかい?

それは三ヶ月前だって そうだった……

どうも三日前だったんじゃないかと思ってしまう

失礼な ジジイじゃない オジサマだ

ああ……恥ずかしいなんて どっかに蹴飛ばしとけ

オジサマの方がモテるんだ それでいいだろ

とにかくそんなとこで突っ立ってないで こっち来い

なんで そんな離れた席で……カウンターに来い

そんな 客と店主ってだけの間柄じゃないだろ

数秒の間

SE:椅子を動かす

よく来たな……こんな土砂降りにまあ 出かけようと思ったもんだ

そんなに鬱々(うつうつ)してたのか

おいおい 邪険にするなよ

そのペンダント つけてきたのか……なるほどなぁ 汚れ知らずのハリネズミの石の効果 すごいだろ

濡れずにここまで来られるってもんだ

よく効くだろう 俺のマジックアイテム

はは……魔法使いのキャリアは長いからな 君の役に立ってうれしいよ

だけど 汚れないとか抜きにしても……こんな日に出かけるなんて 奇妙だな

なんかあったんだろ……いや なんも無くていいさ とりあえず話そうぜ

その前に注文だな! そうだよ いくら君だって 対価も払わず店にいられちゃこまる

何を頼まれますか お客様?

おすすめは……これ 夢鯨のソテー 

こいつ 夢の中を回遊するんだけど 脱皮もするんだよ その皮の裏側に脂たっぷりの肉が……

なんでマジックメニューって……上手いし 俺も食べたいんだ

一人で食べるつもりだったが 二人で食べるのも悪くない

もし客が来たら……?  ソレは安心しろ

もう今日は店じまい どうせこの雨じゃ人は来ないよ

なら 楽しい時間を過ごした方が 幸せってもんだ

SE カウベル
SE どしゃぶりの音

シーン2 何がそんなに嫌なんだい?

SE:雨音(遠のきながら)
SE:シャンパングラスを合わせる音
BGM:ジャズピアノ(雨音と入れ替わり)

いやー 音楽はいいねぇ……殺風景な店も華やかにするってもんだ

SE:ゴクゴク(品の良いの)

どうした そんな固まって せっかくのソテーだぞ 冷めるぞ

お やっぱそうか うまいだろ……俺も大好物なんだよソレ

結構肉厚だし 歯ごたえも嫌な感じじゃない

だがいかんせん素性を人にほとんどあかしてないってこともあって

独りで楽しむグルメなんだよなぁ ははは(あっははって感じに笑い飛ばす)

そこで一般人アピールはいいから

魔法使いの魔法を目撃して 魔法使いと食事を共になんかしちまったら

お前は十分関係者だよ 俺の

一般人じゃないんだなーこれが

なんだよ 素直にどうしよみたいな顔するんじゃないよ

俺のトクベツって言えばいいのか? まあ間違っちゃないが

くくっ……ちょっと意識しただろ 耳たぶ赤いぜ

さて俺も食べるか夢鯨 あ んん んく(ソテー食べてます)

SE:カチャカチャ(ナイフとフォークが皿に当たる音)
BGM ジャズピアノ(ゆっくりフェードアウト)
SE:ページをめくる音

何を読んでるって? ああ カタログだよ……今度店に飾る用のな

そうだな 絵は好きだよ

小説が他人の人生を疑似体験させてくれるものであると言うならば……絵画はいろんな世界の姿を見せてくれる

俺にとって世界は陽気なものだし 陽気であってほしい

だけど人によっては 世界は灰色で 先の見えない不安がもやになって 覆ってるのかもしれないな

なんだよ……黙り込んで 珍しいな

あ? なんもなくて困ってるって……なんだ暇なのか

あー分かってました こういうとキーキーって感じになるんだよな君

ハリネズミが威嚇してるみたいだ 

間違っちゃねーだろ まちがっちゃ

君が今の状況に憂いを覚えてるとしたらあれだ 状況が何も変らず何も無いことじゃない

もっと君の内側だ

君の世界は 今何色に見えてるんだ?

世界は空っぽなわけじゃ無いんだ 空っぽだとしたらそれは……

シーン3 こんな話があるんだ

SE:時計の音
SE:どしゃぶりの雨(小さく)

周りが進んでいるのに……自分だけその場にいるような感じか

(ため息)なるほどねぇ……そりゃどしゃぶりの雨を見たら 憂鬱が悪化しそうだ

世界の色が分からないんだとしたら 人の世界の色を見て 考えても良いかもな

それが現状に即した色であれ そうでなかったであれ 君の心の糧になるかもしれない

おすすめかー 俺は陽気な世界をみたい魔法使いだぜ それでもいいなら紹介するけどよ

とりあえず そうだな……お いい絵 あるじゃん……

SE:ページをめくる音

じゃーん これいいだろ 舟遊びをする人々の昼食 印象派の画家ルノワールの大作だ

なんだよ 渋い顔して……は? リア充の香りがする? 絵から

まあ 後の自分の嫁さんやら友人やらが登場してるから……リア充と言っても過言じゃ無いかもな

ルノワールは死ぬまで絵を描くことをやめなかった画家でなぁ……その世界は幸福の色彩で彩られていたと 俺は思う

人生が充実してるのはちょっと……みたいな顔するなよ 実際にルノワールの世界は幸福に彩られていたわけじゃないぞ

確かに画家としては生前から大成はしていたが 自身も従軍するし 息子も従軍するし……あげくリウマチで手足は麻痺していた 絵を描くのだって 地獄のような苦しみだったはずだ

それでも彼は 世の中は不愉快だから 芸術や絵画では幸福な世界を追求する そういう画家だったんだ

ままならない世界を感じとりながらも 幸せで反抗する画家は 正直 ルノワールの他に知らないな俺は

今の話を聞くと この絵の見方も変わるんじゃ無いか?

ルノワールの祈りを感じ取れるかもしれない

世界は不愉快で 皮肉も大きく うまくいかないことばかり

だけど どんな痛みでも苦しみの中でも 光はある

俺はそう思うよ……

おいおい 熱心に語って何が悪い

オジサマの話はよーく聞くもんだ

とりあえず世界の色 一つ 知れただろ?

そりゃ よかった そう言ってもらえると教えた甲斐があるもんだ

心の糧は世界中探せばどこにだってある

いいものを集めてみるのも また手だぜ

シーン4  魔法の時間

SE:雨

雨 多分もうすぐあがるぞ

いやー勘だ 俺の勘がそう言っている

俺の勘はあたるぞ 信じてくれよ

雨が上がったら何をするんだ?

俺は買い出しかな タマネギちょっと少なかったんだ

君は……うんうん 洗濯しないとな

雨で ろくに乾かなかっただろうしな

まだ雨は止まなくて ちょっと店 暗いな

明かりはつけてるんだけど 不思議だ

こう暗いと 気分まで湿気っちまうな

ああ……そうだ うんうん

俺 君に 見せたいものがあるんだ

変なモノじゃねーよ

ただちょっと世界が素敵に見える そういうもんさ

(囁き)目を瞑って……そしてゆっくり開けるんだ

SE:線香花火

……ちょっとびっくりするだろ

その顔 見たかった

ああ そうだ……線香花火みたいな光を いくつもいくつも浮かべてみた

打ち上げ花火よりド派手じゃないが これもこれでおつだろ

ちょっと薄暗いから……色も映えるし

こんな雨の日ほど、人生は灰色じゃないかと思うかも知れないけど

世界が暗い日は その分 色彩は鮮やかになる

結構 きれいだろ はは

……やっと 目がキラキラしてきたな

君がもし 自分の世界の色を見つけてきたなら 教えてくれよ

俺は ちゃんと待ってやるから

なんでってそりゃ……

……よく考えてこい 俺からの宿題

ヒントは教えないし 答えなんてもってのほか

俺の考えてること 俺自身のこと よく考えるとわかるかもな ハハッ

そこ ケチとかいわない

SE:雨の音(フェードアウト)

ん……ああ 雨

あがったぞ 虹が出て きれいだな

さて うごきだそうか……お互いにな

【一人語り台本】その手のひらを掴んだ者は(男性用)

男……かつて人に復讐し、その後依頼によって復讐を遂行する復讐屋になった。けして神に救われないし、どこにも属せないと思っている。仕事の時はきっちりしているがそれ以外だと、猫一匹傷つけられないほどに優しく、誰かを助けたい人

ん……なんだここ……水……うわ、水が流れ込んでいるのか

俺、どうしてここにいるんだ……仕事を終えて……そっからの記憶が無い

足首まで水が来ているな、なんにしても早く……ん、どうやってここを出るんだ

扉はあるっちゃあるが……これじゃ出られないなっ……くそ……

物音……誰かいるのか?

おい、アナウンスで話しかけるのかよ、姿を見せろ……

断られてしまった……はあ、つまりは君が俺を閉じ込めてたってことだな

罪を思い出せ……

あいにくとだが……俺から罪を外したら空っぽになっちまう

ただでさえ、人からすりゃ、間違った男なんだから

どうした、そんなマジマジと見て

……え? ああ……聞き覚えのある名前だな

俺は自分のやってることは全部記録つけてるんだ

えーと……ちょっとまてよ……ああ、数日前の記録にあるな

俺が殺害した男の名だ、依頼№236……だな

どうした、そいつを殺したことが……何か君にとっていけないことだったのかい?

なんで殺したと言われると、まあ、俺の商売を打ち明けないといけないが……

ここでもったいぶってもしょうがないだろう、復讐屋だ

依頼者はそいつの結婚詐欺で被害をうけたんだ……絶対許すつもりはなかったようだ

前金もたくさんもらってたし……すぐに始末をつけたよ

M:……水が急に止まった。開くことのないとおもった扉がおもむろに開く……開いた扉の先には
顔を真っ青にした女性が立ち尽くしていた。

ありがとう、これは解放してくれるってことかな

え……殺してくれて……はは、まさか感謝されると思わなかった

そうか君のお姉さんは……だまされて……

こんなことを言っては酷だが……殺す前にその男に、自分の罪の自覚を聞いたんだ

ソイツは……笑って多すぎて分からないと言った

私の依頼者のことすらおぼえていなかったことをかんがえると……君のおねえさんのことも……そういうことになるのだろう

ひどい話だ……この世に、どうしてそんなひどいことが出来る人間がいるのかとおもうくらいには

ああ、うん……悪魔なのかもしれないな、俺も人のことを言えないが

さ、家に帰りな、俺は今日のことは忘れるから……ん?

M:女性がいきなり床に打ち伏した。そして嗚咽を漏らす。何かの糸がきれたように……帰れないと叫びながら。
その姿が……どこか自分と被った

ああ……わるいな、急に呼び出して

悪いトモダチがお前しかいなくてよ、相談したいんだ

他の善いトモダチには話せない……こんな自分の姿を見せたくない……

そうだ、俺らの妹、アイリスを死なせたアイツのことだ

アイリスを汚し、死した後も汚したあいつを……ヤった

もう……俺は帰れないよ……皆と遊んだ日差しの下には

別れを告げず、一人でどこかで野垂れ死ぬべきだったと思う

(震えながら)でもこの銃で頭を撃ち抜く前に、お前に会いたかった

アイリスに謝ってくれ……俺はもう汚れちまって、アイツに会えない

ああ……やっぱり怒鳴った、お前はそういうヤツだったな

だが俺はどう生きればいい……どうすればいい……俺の手は汚れたのに……

え? それはどういう……復讐で誰かを救え……?

M:神様がけしてお許しにならないであろう提案に乗っかって、俺はもう何年も復讐しつづけている。それが生きていくという証明のように

神も姉も許さないか……ああ、そういうこともあるだろう

何より復讐で手を汚そうとした自分も許せないんだろうなぁ

復讐にはエネルギーがかかる、そう、それこそ自分の命を投げ捨てるようなくらいのときもある

けれど、それが無ければ死んでしまうこともあるんだよ

その復讐心が怒りが、人の命をつなぎとめる……今の君がそうだろう

復讐を中途半端に完遂され、そしてその後遺症で君は苦しんでいる

その地獄が自業自得だと責められるものではない

なんも知らないなら、ことさらにな

はは……ちょっと、真面目なことを言ってしまった

……そうだな、復讐には持論はある

俺は復讐屋をする前に、一人殺してるんだ

妹分を死に追いやった男をな

地獄だった、俺は神にも許されないし、どこにだっていけないだろう

だけどそうでもしなかったら、俺は一番自分を赦せなかったろうな

妹を守れなかった兄としてはな

M:俺は彼女に手を差し出した

行き場がどこにもないなら……俺のとこへ来ないか

神のもとにも、家族の元にもいけないんだろう

だったら、俺のとこはある意味ちょうど良いんじゃないかな

なに、俺の場所は止まり木にすぎない

本当に帰りたい場所、帰る場所が見つかれば……そこに行けば良い

ああ……バカかもしれないな……昔もよく言われたんだ

お人好しって……皆にな

【一人語り台本】その手のひらを濡らしたものは(女性用)

女性……姉が結婚詐欺にあい人生も精神的にこわれてしまった。
その復讐のために、犯人を見つけ出し、水が流れ込む部屋に閉じ込めた。精神構造は別に特殊なわけではなく、自分の行動に迷ったりしてる。


SE:コンコン

ねえさん、ごめんね……いきなり入っちゃって

今日の気分はどうかな、外は良い天気よ

……どうしたの? 何を言ってるの?

ごめんね……私、ねえさんが見えてるもの、分からないの

何が見えて聞こえているのか……誰も分からない……

あいつが、ねえさんを壊したから……

あんなに優しかったねえさんに、どうしてこんなひどいことが出来るんだろうね

……ねえさん、そこに何もいないよ……いないんだよ

どうして、そんなに幸せそうなの……

もうソッチじゃないと幸せじゃないの……

M:今から三年前、私の姉は結婚詐欺にあった。結婚詐欺はだまされたほうも……といわれがちだけど、本人からすればとても必死で、一生懸命に愛していたのだ。
そうでなければ……姉はこんなにも壊れなかっただろう。犯人は捕まっていない、隠れるのが随分上手だった。探すのに苦労した、見つけるのも大変で……でも、ようやく……私はアイツを捕らえた。

起きられましたか?

ずいぶんとよく寝てましたね。薬がずいぶん効いたんでしょう。

ふっ、どうしたんです……そんなに慌てて?

水、ああ……流し込んでますよ。あなたのいる、その部屋に。

少しずつですけど……もう足首までたまってますね

ここ、もともと水路の一部を部屋にしたものなんです。石を積んでね。でも古いからちょっと石をうごかせば……

ね、水がさらにはいる

そんなにキレないでくださいよ……これくらいたいしたことじゃないはず……あなたの罪に比べれば

ここは私の庭、私の法廷……あなたは裁かれるべきなんですよ

大人しく、何が罪か認識して、懺悔しなさい

M:一つ一つ強い言葉を吐く度に、心臓がおかしいくらいに飛び跳ねる。こんなことを言ったことがないとおもうばかりの言葉だ。私は怖かった。だって、私が人を裁くだなんて……けれど警察や法の裁きをうけたとしても、私が納得するとは思えなかった。ぐらぐらな私が裁定する、こんな笑えることはない。けれど……。

お姉ちゃん……私、ガンバルからっ

(ため息)なんで押し黙っているんですか?

あなたの罪を思い出せ……そう言っているだけですよ

は? 何を……?

どの女の話……?

あなたはもう何人も、いえ何十人も……

っつ、なんでそんな困ってるんですか?!

本当に思い出せないって……

あの人はお前の飯の種一人で片付けられる存在じゃ無い!!!!

くそ……笑うな!

お前……自分の命が誰の手に委ねられてるか分かって言ってるのか

今すぐだって私は……! ああっ……

M:立っていられなかった。今私は何を言ったんだ。私はそんな人間じゃなかった。
怒りにまかせて行動しなかったし、人をあんなに殺したいと思ったのは……初めてだった。まるで私が私じゃないみたい……

あ……ねえさん、どうしてそこにいるの……

屋敷にいるはずじゃ……私の、頭を撫でてくれるの……?

ねえさん……ああ、ねえさん……私は正しいのよね

正しいって言って……微笑んでるだけじゃ、何も分からないよ

ねえさん……!

M:ねえさんは本当にアイツを愛していたのだ

最近、ねえさん……外にでかけてばかりでいやだわ

そんなにあの人が好きなの?

別に、寂しいわけじゃ無いわよ、別に

ただ以前のように……いっしょにいるのが減ったなって……

だから寂しいわけじゃないの!

これでもねえさんの幸せを祈ってるんだから

ねえさんは……あの人のドコがすきなの?

いや、あるでしょ、好きなとこ

なんで顔真っ赤にして……え、もしかして

もしかして、全部好きってヤツ?

やだ……かわいい……

ちょっと急に、早足にならないでよ!

まってよー、ねえさん!

M:ねえさんは本当にアイツを助けたかったのだ

ねえさん、帰りおそかったわね、今日も仕事?

最近働き過ぎよ……ろくに休んでないじゃない

私だけじゃ無い、家族みんな心配してるのよ

おばあちゃんなんて、寂しがってる……

まって、そのまま自分の部屋にいかないで!

ねえさん、どうしてそんなにお金が必要なの

生活する分には困ってないわよね!

……だまってしまうのね……正直、言いたくないんだけど……

あの人のためなんでしょ

あの人のために働いてるんでしょ

恋人を支えたい気持ちは分かるけど……私は、ねえさんがどうかしてしまいそうで……こわい……

そんな優しくしないで、それでごまかさないでよ

ねえさん……ちゃんと話をしましょ

それはだめってどういうこと……ねえ、行かないでよ

行かないでねえさん!

M:ねえさんがぼろぼろになったあとで、アイツは姿を消した。そしてアイツの何もかもがウソだと発覚し……ねえさんはおかしくなってしまった。

どうしました……そんなに震えた顔で見て……

ああ、もう、腰まできてますもんね水

このままだと死にますよね……死にたくないなら……思い出してください……

私が赦せなくなる前に……!

話がある? なんですか、この後に及んで話?

自分には女を騙さないといけない理由がある?

(間を置いて)

……うん……うん……なるほど……そう……

つまり、自分を虐待した母親への復讐心が、女を傷つける原因になったということですね。

お腹の上まで水がくるまで、話したかった話がソレですか

……くだらない

ねえさんは……こんなくだらない男に、人生を壊されたの?

何で怒るんですか? くだらないものはくだらない……それだけですよ

虐待されたら、ねえさんを傷つけていい道理になるわけがない

罪を起こす理由があったから、ねえさんがああなってもしょうがないなんて、ない!

そんな言葉で、私たちの怒りや涙が収まるとおもったの!!

ふざけないで!!!!

……え?

……なんていったの?

だまされるのが、わるい……?

お前、どうしてそんなひどいことが言える? 思えるの?

ねえさんがどれだけお前を愛していたか知っていたはずなのに

どの女ってなんで私に聞くのよ!

お前はどうして覚えてないの……!

ねえさんなんて……そんなどうでもいい……存在だったの……

こんなやつ……こんな、やつ……死刑になってしまえ……

死んでしまえぇえええ!

M:姉はよくこんなことを言っていた

もう大人だから、そう言われてもあんまりうれしくない

うれしくないからー

(照れたように)優しいイイ子って

(間を置いて)

ねえさん、ごめん……

私、もうねえさんのところにかえれない……

私の手はもうこんなにも汚い……もう、ねえさんがいってくれたような、イイ子じゃない……

M:私は死体となって水の中をたゆたう、アイツを見た。コワイくらい白い顔だった。
 そして……私はそっと床に置いていたナイフをとる。するどい刃を首にあてがう。
 
ごめんね……

【声劇】とある祝福(♂×2)

ツリー……村の郵便やさん、村の情報通でもある。村の人気者のリリアンから色々と依頼されていた。

コース……リリアンの隣に家に住む青年、体が弱くリリアンに色々と世話されていた。


ツリー「おお、コースか。どうしたんだこんなところで」

コース「それはこっちのセリフだよ、ツリー。村はずれのこんなところまで、よく来たな」

ツリー「いやー、村が騒々しくて、逃げてきた。分かるんだけどね……この状況は」

コース「そうだな、家にいると村の人がやってきそうで、俺も逃げてきたんだ」

ツリー「なんだ似たもの同士か」

コース「そうだなお仲間だ……ああ、こんなお仲間いらないんだけどなぁ」

ツリー「失敬だな……! はは……まあ、そうなるよな。コースはリリアンと仲が良かったから」

コース「……リリアンはどこに行ってしまったんだろうか」

ツリー「わからない。でもまだ近くにいるんじゃないかな。昨日街に行く山道まで巡回してたそうだけど、全然見つからなかったそうだ」

コース「そうか……体がこんなものじゃなかったら、俺も探しに出てたのに」

ツリー「体が弱いことは誰も責めやしないよ……リリアンは君を献身的に看てたんだっけ……」

コース「そうだよ……彼女は癒やしの力を持っていたからね……」

ツリー「自室に花をまき散らして、いなくなったんだっけ」

コース「そう、それも不可解なんだ」

ツリー「うーん、花をまき散らす意味ってなんなんだろうなぁ……」

コース「それを俺に聞かれても……俺が聞きたいよ」

ツリー「……リリアンは良い女性だったねぇ。優しいし献身的だし、そのくせ面白い! こんな田舎で娯楽もなにもないようなとこにいるにしちゃ、良い人すぎたよ」

コース「全然浮いた話もなかったけど、村長の息子がだいぶ気にかけてたし、そのうち結婚すると思ってた」

ツリー「おや、君は彼女のことを狙わなかったのかい?」

コース「俺は無理だよ……彼女とそんな関係なんて……」

ツリー「なるほどなぁ、高嶺の花じゃないんだけど、なのに触れたらいけないっていうさ……謎のアレがあった気がする」

コース「リリアンは皆のものって感じだろ」

ツリー「そうそう、それ! 実際捜索でもたくさんの人が出てるし、心配している。本当に愛されてるな!」

コース「俺のリリアンなのに(ぼそっ)」

ツリー「ん? なんか言ったか?」

コース「なんでもない。あ、リリアンって両親はいないけど、愛情をいっぱい受けたらしいよ。だから、愛されたい願望はあるけど、それ以上に愛したいというのもあったようだね」

ツリー「へーそりゃ初めて聞いた。知らないことがあっても当然だと思うけど」

コース「俺だって外のリリアンをあまり知らないよ。そんなに愛されてるとは思わなかった」

ツリー「へんな意味じゃないけど、リリアンに迫ってる感じするな。もうちょっとしゃべろーぜ、チーズとハムはどうだ? さっきつまみに買ってきたんだよ」

コース「いいね、ちょうど、ぶどう酒を持っていたんだ。一人で酔うつもりだったけど」

ツリー「いいねぇ……リリアンがいたらきっと、昼間から元気ね!って笑うんだろうけど」

コース「リリアンって、全然怒らないんだよな、なんか冗談みたいに優しい」

ツリー「あのさ……唐突なんだけど、リリアンって大食いなの?」

コース「は? 大食い? なんでそんなことを聞くんだよ」

ツリー「いやー、肉屋のガウルが、最近肉をよく買ってるんだよとか言うし、他の人も色々とよく買ってるんだとか。後……酒もちょっと買ってるみたいで、酒屋が酒好きになったのかねって言ってたな」

コース「そんな大食いだなんて思ったことはないぞ。一人暮らしの女性だし、食べる量にも限度はあるだろ」

ツリー「だよなぁ、俺の仕事って郵便やだからさ、情報が手に入るんだけど……不思議だなぁと思ったよ。それと新聞も買ってた、うちから」

コース「しんぶーん??? 街のニュースでも読もうってのか? この村へんぴだし、皆外に行きたがらないじゃん。いるのか? そんなもん」

ツリー「俺も思ったわー。街のニュースは郵便を扱う関係で聞くけど、なんか別世界だなって思うしなぁ。外に対して無関心って言えばいいのか……」

コース「……その話ってさ、アレと関係あるのかな」

ツリー「あれ?」

コース「いや、なんか直感で話してるんだけど……前、リリアンはよく俺を家に招いてくれたんだ。飯が出来たとか、お茶の誘いとかで。でもここ二ヶ月、俺すらもあげてくれないんだ」

ツリー「なんでまた……コースまで入れなかったら、他の人なんてことさら入ってないんじゃないか」

コース「だと思う、それ以上に気になってたのは、疲れてるんだすごく」

ツリー「疲れてる? 彼女、相当元気な方じゃないか」

コース「そう、そうなんだよ。でも疲れないわけじゃ無くて、例えば俺がすごい熱をだすとするじゃん。それを癒やしの力で治すと、本人がすごく疲れるんだ」

ツリー「それってなんだ。癒やしの力をすごい使うほどのことでもあったのか」

コース「俺にはそうとしか思えなかった。でも俺の知ってるかぎりで、そんなことがあったなんて聞いてない」

ツリー「俺もだ。二ヶ月前に落石が山であったけど、人に被害が出たとは聞いてない」

コース「そんなこともあったんだ……ああ、きっと病でろくに外のことがわからなかった時期だ」

ツリー「そうだったなぁ、うん、コースは知らなかったんじゃないかな」

コース「……リリアンが家に人をいれなくなったのもその時期だな」

ツリー「え?」

コース「リリアンは、もしかして本当に悩んでいたのか?」

ツリー「なんだよ、その意味深な……リリアンの何を知ってるんだ」

コース「いや、なんていうか、言ってたんだよ。オトナになると、好きなものを好きというのはむずかしいって」

ツリー「彼女は皆のこと好きだと思ってたよ」

コース「そう。俺もそう思うんだ。皆が黄色い花が好きだといってるのに、赤い花が好きというのは言いづらいとも言ってた。ああ、そういうことってあるよな……なんせ村が一つの家族みたいなもんだから、そういうこと、あるとおもう」

ツリー「彼女は何か言えない好きなものがあったのかな……そういえば、新聞とってることを珍しがってたら、彼女言ってたんだよ。すげー、一人言みたいに。井戸の外の世界ってどんなものかなって。ちょっと意味が分からなくて、うまく応えられなかったけど」

コース「それ、彼女が以前言っていたやつかもな。井戸の世界に自分達はいる……そんなことを」

ツリー「どうして彼女はいなくなったんだ」

コース「それは分からないけど、部屋中にまいていた、この花に何かヒントはないかな。意外とこういうのに、ヒントや答えがあるもんだろ」

ツリー「押し花にしてたのか、うーん、なんだろ……ちょっと調べるか……えっと、辞典辞典」

コース「綺麗な花だよな。ほんと彼女に似合いそうな花だよ」

ツリー「ああ、これ……イキシアの花だな。花言葉は……え」

コース「どうした? そんなびっくりして」

ツリー「いや、うん……えーと……花言葉はな……秘めた恋」

コース「そうか……」

ツリー「意外と驚かないんだな」

コース「驚いてるよ、驚いている以上に、彼女は誰かと外へと行ったんだと思うとさ……ああ、彼女は鳥だったんだなって、泣けるんだ」

ツリー「コース……そうか、リリアンは……井戸の外、鳥かごから飛び立った鳥なのか」

コース「こんなドデカいことして、それが間違いの恋だったらと思うと心配だけどね」

ツリー「そりゃそうさ、僕らのリリアンだ! 絶対幸せになってもらわなくちゃ!」

コース「ああ、リリアン。君はいまどこにいるんだろうね……せめて門出を祝いたかったよ」

ツリー「まだ山は越えてないとはおもうんだけど……そうだ! 今日の夜ちょっと話をつけて、山の方へ人を行かせない。そうしたらリリアン達は、山を越えて外に行ける」

コース「おお、それは……リリアンはきっと喜ぶよ」

ツリー「コース、二人で山に向かおう。今から準備すればなんとかなるよ」

コース「え、でも」

ツリー「ちがうよ、彼女の旅を止めるわけじゃ無い。祝福するんだ」

コース「ツリー! 君はうまいことを考えるな!」

ツリー「へへ、名案だろ。さっそく準備しようぜ」

コース「ああ……まったく、ぶどう酒を飲んでる場合じゃ無い!」

陽気な戯曲作家はお話を揚々と語る

いらっしゃいませお客様、初めて見る顔だね
冒険者の宿「シアター」へようこそ
お求めは食事、宿泊、冒険譚、それとも冒険そのものかな?
ビールとソーセージ、任せてくれたまえ、すぐに用意しようじゃないか、カウンターに掛けて待っていて欲しい


(SE)


お待たせしてしまったかな、ご注文のお品だ、フィッシュアンドチップスはオマケさ、嫌いでなければ食べておくれ、お口に合うと嬉しいのだけれど
さて、ご要望は食事だけかな?もしそうなら当劇場の看板女優を招いて一芝居お披露目するのだけれど、なに彼女は観客が1人だろうと名演を披露してくれるさ
ん、どんな冒険譚があるのかって?
小さな物から大きな物までなんでも揃っているよ、近所の女の子が逃してしまった迷い猫探しや道具屋から万引きした犯人を走って捕まえたり、深い洞窟を探索の果てに宝箱を見つけたり!とっておきは西の国へドラゴン征伐をしに行くお話だ!
大小あれどみなドラマに溢れた冒険さ、気に入って貰えるに違いない、さぁどんな物語が好みかな?
悪徳商人の悪事を暴き懲らしめるお話かい?
なるほど、中々具体的だね、いや勿論あるともさ、だけどこれは彼女にお願いするより私が読み上げた方が良さそうだ、なに、手掛けた戯曲はいつも自分自身で一度演じているからね、きっと退屈はさせないさ。
今から語るのは、この街であった事がモデルになってるお話だよ。
ある所にカーンという商人がおりました、彼はその界隈では名うての人で同業者で知らない者はモグリと言われるほどの店を構えている。だけれども、街行く人に彼の事を聞いても知っていると答える人は1日探しても数える程度になるかどうか、そう、カーンは裏世界の住人だったのです。
さてさてある日、彼の屋敷のとある部屋、身なりの良いお嬢さんがおりました、天蓋付きのベッド、花瓶にはとりどりの花が挿されテーブルには紅茶とケーキ、まさに箱入り娘を絵に描いたような光景だね。
だけど彼女の表情はどこか優れない、何故だろうか、はめ殺しの窓?それとも部屋の外で警備をしている屈強な男?勿論そのどちらもだ、察しの良い観客の皆様ならお気付きだろう、彼女は囚われの身、この家の娘ではないのだ。
カーンの娘として富豪に嫁いで行く、それが彼女が迎えるであろう不幸、そしてその後どの様な扱いを受けるのかは想像に難くない。
だがしかしこの戯曲作家、そんな話は好みじゃない!私が好きなのはね、痛快で胸のすく思いにさせてくれる英雄譚なんだ!
彼女が耳にしたのは彼方から聴こえてくる叫び声と金属音、そうとも侵入者の登場だ、しかし彼女の顔はまだ優れない、何故ならこの屋敷に詰める警備の数は伊達ではないからだ、彼女は知っている、侵入者が漏れなく酷い目にあっている事を。だが音が近付いてくる、一段と騒がしくなっていく、もしかして助かるんじゃないか、そんな希望が彼女の心を満たした時扉が勢いよく開かれた!
そこにいたのは見知らぬ人、剣と鎧で武装をした冒険者、そう彼女は救われたのだ!
くびきから解き放たれた後は簡単さ、揚々と屋敷を後にし晴れて自由の身、めでたしめでたしって訳だね!
え、悪徳商人がどうなったかって?裏世界は信用が第一、契約を履行出来なかった商人のいく末やいかに!っと言ったところかな。
どうかなお客さん、ご期待には添えただろうか、あなたの琴線に触れる事が出来たのなら何よりの誉だ。
....さて、実はさっきの話には少しだけ続きがあってね、囚われのお嬢さんはその後、更なる自由を求めて冒険者になりましたとさってね。全く関係ない話ではあるのだけれど、当冒険者の宿「シアター」はいつでも新たな仲間を募集している、あなたも良ければご一考頂けないだろうか....?
もちろん、答えを急ぐ必要はない、何故ならここは飛びっきり敷居の低い酒場でもあるからね、自慢のフィッシュアンドチップスを用意してお客さんをお待ちしているよ。


それでは、またのお越しを、次は是非看板女優の名演技を堪能して行って欲しい、ご来店、誠にありがとうございました。