蒼のウィステリア

藤色雨とリシテアの台本や情報をまとめています。

【一人語り台本】その手のひらを掴んだ者は(男性用)

男……かつて人に復讐し、その後依頼によって復讐を遂行する復讐屋になった。けして神に救われないし、どこにも属せないと思っている。仕事の時はきっちりしているがそれ以外だと、猫一匹傷つけられないほどに優しく、誰かを助けたい人

ん……なんだここ……水……うわ、水が流れ込んでいるのか

俺、どうしてここにいるんだ……仕事を終えて……そっからの記憶が無い

足首まで水が来ているな、なんにしても早く……ん、どうやってここを出るんだ

扉はあるっちゃあるが……これじゃ出られないなっ……くそ……

物音……誰かいるのか?

おい、アナウンスで話しかけるのかよ、姿を見せろ……

断られてしまった……はあ、つまりは君が俺を閉じ込めてたってことだな

罪を思い出せ……

あいにくとだが……俺から罪を外したら空っぽになっちまう

ただでさえ、人からすりゃ、間違った男なんだから

どうした、そんなマジマジと見て

……え? ああ……聞き覚えのある名前だな

俺は自分のやってることは全部記録つけてるんだ

えーと……ちょっとまてよ……ああ、数日前の記録にあるな

俺が殺害した男の名だ、依頼№236……だな

どうした、そいつを殺したことが……何か君にとっていけないことだったのかい?

なんで殺したと言われると、まあ、俺の商売を打ち明けないといけないが……

ここでもったいぶってもしょうがないだろう、復讐屋だ

依頼者はそいつの結婚詐欺で被害をうけたんだ……絶対許すつもりはなかったようだ

前金もたくさんもらってたし……すぐに始末をつけたよ

M:……水が急に止まった。開くことのないとおもった扉がおもむろに開く……開いた扉の先には
顔を真っ青にした女性が立ち尽くしていた。

ありがとう、これは解放してくれるってことかな

え……殺してくれて……はは、まさか感謝されると思わなかった

そうか君のお姉さんは……だまされて……

こんなことを言っては酷だが……殺す前にその男に、自分の罪の自覚を聞いたんだ

ソイツは……笑って多すぎて分からないと言った

私の依頼者のことすらおぼえていなかったことをかんがえると……君のおねえさんのことも……そういうことになるのだろう

ひどい話だ……この世に、どうしてそんなひどいことが出来る人間がいるのかとおもうくらいには

ああ、うん……悪魔なのかもしれないな、俺も人のことを言えないが

さ、家に帰りな、俺は今日のことは忘れるから……ん?

M:女性がいきなり床に打ち伏した。そして嗚咽を漏らす。何かの糸がきれたように……帰れないと叫びながら。
その姿が……どこか自分と被った

ああ……わるいな、急に呼び出して

悪いトモダチがお前しかいなくてよ、相談したいんだ

他の善いトモダチには話せない……こんな自分の姿を見せたくない……

そうだ、俺らの妹、アイリスを死なせたアイツのことだ

アイリスを汚し、死した後も汚したあいつを……ヤった

もう……俺は帰れないよ……皆と遊んだ日差しの下には

別れを告げず、一人でどこかで野垂れ死ぬべきだったと思う

(震えながら)でもこの銃で頭を撃ち抜く前に、お前に会いたかった

アイリスに謝ってくれ……俺はもう汚れちまって、アイツに会えない

ああ……やっぱり怒鳴った、お前はそういうヤツだったな

だが俺はどう生きればいい……どうすればいい……俺の手は汚れたのに……

え? それはどういう……復讐で誰かを救え……?

M:神様がけしてお許しにならないであろう提案に乗っかって、俺はもう何年も復讐しつづけている。それが生きていくという証明のように

神も姉も許さないか……ああ、そういうこともあるだろう

何より復讐で手を汚そうとした自分も許せないんだろうなぁ

復讐にはエネルギーがかかる、そう、それこそ自分の命を投げ捨てるようなくらいのときもある

けれど、それが無ければ死んでしまうこともあるんだよ

その復讐心が怒りが、人の命をつなぎとめる……今の君がそうだろう

復讐を中途半端に完遂され、そしてその後遺症で君は苦しんでいる

その地獄が自業自得だと責められるものではない

なんも知らないなら、ことさらにな

はは……ちょっと、真面目なことを言ってしまった

……そうだな、復讐には持論はある

俺は復讐屋をする前に、一人殺してるんだ

妹分を死に追いやった男をな

地獄だった、俺は神にも許されないし、どこにだっていけないだろう

だけどそうでもしなかったら、俺は一番自分を赦せなかったろうな

妹を守れなかった兄としてはな

M:俺は彼女に手を差し出した

行き場がどこにもないなら……俺のとこへ来ないか

神のもとにも、家族の元にもいけないんだろう

だったら、俺のとこはある意味ちょうど良いんじゃないかな

なに、俺の場所は止まり木にすぎない

本当に帰りたい場所、帰る場所が見つかれば……そこに行けば良い

ああ……バカかもしれないな……昔もよく言われたんだ

お人好しって……皆にな