蒼のウィステリア

藤色雨とリシテアの台本や情報をまとめています。

【声劇台本】ある夏の日、時間はくるくる、混ざり合う(男性1:女性1)

女の子(高校生)……現代人、60年前の戦争を学校で学習しなきゃいけなくなり、戦争資料館に来ている。だるくて、個人でうごくことも多い、寂しいところもある。

 

男の子……60年前の同じ場所で援農で働いている少年。軍国教育のもと活発にいきてるが、空腹に悩ませてる。自分もいずれ戦争に行き、死ぬんだろうなぁと考えてる。

 

孫……男の子の孫(男の子と兼役)

 

シーン1

セミの鳴き声

女「あー……だる……暑いし、夏休みになんでこんなところに」

女M「私は、ため息をついた。私は同級生と引率の先生と共に、戦争資料館に来ていた。平和学習ってやつだ。戦争が遠ざかる時代に少しでも今の平和の大切さを……とかなんとか」

女「昔のことに思いをはせるとか、だる……いやそれより、集団行動がめんど……」

女M「学校は嫌いだ、どんなときだって集団行動を求められる。一人で行動させてくれって思うのに……同級生だって、私が集団行動に嫌悪をしてることを知ってるから、声もかけたくないだろう」

きゃいきゃいと騒ぐ声
セミの鳴き声

女「やっと、昼ご飯か……食べよ食べよ……」

女M「私は資料館の裏にある木陰に行った。蝉時雨がやばいだろうと思ったけど、思いのほか静かだ」

女「やっと……休め……あ?」

男「うう……腹減った……」

女「ちょっとあんた、大丈夫……茹でエビみたいにくたばってるじゃない……」

男「えび……えびぃ……そんな贅沢品、たべたいなぁ……」

女「は? スーパーで売ってるでしょ」

男「すーぱぁ? ってなんだろ……もう、どうでもいいや、腹減った……」

お腹の鳴る音

女「なんかぼろぼろじゃん……そうだ、うちのお母さん、めっちゃ弁当に手間かけるんだよね……ちょっと分けてあげる。どうせ、一人じゃ食べきれないし」

男「え……なに……俺、死ぬ前に夢でも見てるのかな」

女「ばっか、何言ってるのよ。ほら……おにぎり、おかかだけどいいよね」

男「こ、こめ!!! くう! くう!!」

女「めっちゃ食いついてきた、コワ……いや、なんでもない」

男「お前、いいのかよ、米をくれるなんて……え、そんなに豊かなのか」

女「米ってそんな貴重品だっけ……むしろ米あまりの話を聞くけど……」

男「はああ? お前何言ってるんだ。米はお国に拠出してるだろが」

女「やだ、なんか戦争時代っぽい話やめてよ。ただでさえ、これからのこと思うと頭痛いのに」

男「は? 戦争してないのかよ」

女「私にとっては、静かな戦争みたいな日常だけどね……はい、からあげ」
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からあげを噛む音

男「はう、うめ……うま……」

女「なんかさー……まさかと思うけど、戦争マニアなの?」

男「え? まにあ?」

女「戦争について興味をもったりして、調べたり知識をもってるひといえばいいのかな。なんかすごいなりきりに見えるよ」

男「俺のとこで戦争を考えないヤツなんていない。皆一丸で戦わなくちゃならないんだよ」

女「あんたさ……顔がやばいよ、いったいどうしたの」

男「あ、ごめん……なんだろ、すごい感覚を違うというか。君って同じ人なのに、全然違うって言うか。変なの」

女「それは……良く言われる、学校で全然集団行動とらないしね」

男「それっていけないことじゃないのか。俺のとこは皆、おんなじように動いてる……非国民っていわれたら大変だからな」

女「なんかすごいなりきりだね……マジで戦争時代の話を聞いてるみたい」

男「戦争時代って、戦争中だろ……っていうか、ここどこなんだろ。俺、援農(えんのう)で畑に水やりしてったのに。君だって、勤労奉仕しないのかい、工場勤務してるんだろ? いや、勤労奉仕してるやつでこんな豪勢な弁当もってたら……あぶないって……非難されるぞ」

女「ちょ、ちょっと待って……援農ってあれだよね、農家の援助をすることで、戦争時代の子供らがやってることでしょ。さっきの授業で説明あった。特にここらは大きな畑があって……」

男「そうだよ、働いてたんだけど、お腹がすごく空いててふらっと倒れたんだけど」

女「……なるほど……なるほど」

ピキーンという感じの効果音
鈴の鳴る音でもいいかも

女M「やばいことになっている気がする。この男の子は本当だ。本当に過去の人間だ。戦争時代からたまたま目の前にタイムスリップしてきてる」

男「どうしたんだよ、神妙な顔をして」

女「ドーナツ食べたい人」

男「はい」

女「プレーンだけど、どうぞ」

5秒の間
蝉の音

男「うわぁ……甘い……こんな砂糖の味、いつぶりだ……」

女「それはよかった……」

男「こんなに恵んでもらったのに俺、返せるモノがないんだけど」

女「いいんだよ、大変なんだろうし」

女M「戦争はとっくに終わって、それは敗戦で、君が苦しんで頑張っている日常は、ある日瓦解する……未来人としては、そんな日常に帰んない方が良いと思う」

男「そっか、ありがとよ! これで午後作業もがんばれるわ」

女M「けれど、その言葉は、傲慢だ。直感的そう思った。彼の人生に私は介入できてしまう。だけど運命に介入して、果たして私は正しいのだろうか」

女「なんか、超がんばるね。そういえばそんなに働いたりしてたら、遊べないんじゃない?」

男「遊んでるよ、上級生が義勇兵になって下級生の俺らとチャンバラするんだ、俺ら、敵兵になっちゃうけど……」

女「あー、年上がかっこいい役目なんだ」

男「そうなんだよぉ。でももっと大きくなればかっこいい役になれるから!」

女「楽しみって感じじゃん、いいね、私もう何年もそんな遊びしないな」

男「えー、人形遊びもしないのか」

女「そんな年じゃないしね……なんていうか、あんま人とつるまないの」

男「……なんで?」

女「少なくともうちの教室ではやりたくないの、気持ち悪いから」

男「えー、よくわかんないな、仲間とかじゃないのか?」

女「君のとこだとわかんないかもだけど、うちの学校、いじめとかすると起こすとそれがとっても学校の成績に影響するの。しめつけきついのよ、だから皆仲良しごっこしてる、なんかさ、感情を堪えて生活しなきゃ行けないんだよ全員で。めっちゃ嫌だよ」

男「はあ……なんか、すごい分かんないけど……君の顔を見るとよっぽど辛いんだな」

女「そ、そんなことないし、変な顔をしてた?」

男「辛そうだった……そっか、恵まれてるみたいだと思うけど、違う戦争を味わってるのかなぁ……」

女「そうかもね……」

男「俺の姉ちゃん、バカみたいに人いいから、今度会わせてやるよ! もしかしたら友達になれるかも」

女「ははっ、まさか友達候補の紹介うけるとは」

男「だって、見放せないし。なんか見放せない」

女「そんな、じっと見ないでよ」

男「ごめんごめん」

女「……でも、ありがと……強がってるつもりは無いけど、ちょっとしんどいときあるし。ありがたいよ、優しいじゃん」

男「へへへーもっと強くないといけないとおもうけどな! 敵兵を倒すために!」

女「……君は、十分強いよ」

男「そうかな、まあいいや、よしそろそろ、いかなくちゃ……またな」

女「またね……また会いたいな」

男「うん、周りに俺に年上の友達が出来たって自慢しなきゃ……!」

女「え……それって」

男「じゃあな!」

女「あ……きゃっ」

強い突風が吹く
蝉の声
遠巻きに聞こえる人の声

女「もう、いない……」

蝉の声が強まる

女M「少し……未来の話をしよう。この資料館のある場所には、昔大きな畑の持つ農家の家があった。だけど戦争末期、空襲で焼け野原になり、大きな被害が出たという。私と出会った少年も……恐らく……きっと……」

蝉の声が弱まっていく
(10秒ぐらいかけて)
足音が鳴り響く。

女「次、語り部の話を聞くのかー、これでやっと終わる……」

椅子に座る音

男「すいません、本日祖父が語るはずだったんですが、ちょっとぎっくり腰で……ボクが代理で祖父の話をしたいと思います」

女「え……」

男「まずはそうですね、当時の少年の祖父は、空腹のあまり、風変わりな夢を見たことあるらしいんですよ……ドーナツを年上のお姉さんからもらったって……」

女「なに、語りついでるのよ……」

女M「私は思わず微笑んだ、この話を聞いたら……彼とそっくりに成長した孫に話しかけに行こう。……友達に、会いに行くんだ」

 

ボイドラあります

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