【男性向け】惑い狐と男【シチュエーションボイス】
女性……実は近隣の昔話になっている人を騙す狐。昔遊んだ人間を見かけ、からかってやろうかと思ったが、想像以上に疲れていたので癒やそうと思う。
淑やかだが、ウイットもあり、妖艶
シーン1 出会い
SE:草を踏む
SE:夏虫
ん? おや……こんなところに人がくるとは
めずらしいこともあるものです……ふふっ
そうですか……久しぶりにこのあたりへ来たのですね
ふらふらと散歩していたら……そうですね、そんなこともあるでしょう
ただ今は黄昏時、たそ、彼と聞くほど、夕日の逆光で人の顔が見えなくなるのですよ
そういうときは、アヤカシと出会ってしまうかもと言われていますの
ほとんど知らない土地で、ふらふらとここまで来るなんて……不用心だと思いませんか
いーえ、注意や説教という類いではございません
ただ……ふふ、言ってみたかっただけです
それにしても、随分と歩いてきたのですね
首に汗が……
SE:布で拭く
失礼……あまりに雨だれのような汗だったので……気になってしまいました
ふう……男の匂いですわね、汗でも女と違うものです
わたくしから、甘い香りがしますか……ああ、屋敷のお香が香っているのかもしれません
秋のはじまりを迎えているとはいえ……まだ暑さは消えませんね
SE:ひぐらし
ひぐらしの音が、わびしく聞こえるようになった気がしますが
まあ、そんなことより……汗をかいたままでは帰りも辛いでしょう
屋敷で、茶でもどうぞ……何、遠慮することはないですよ
汗がひくまでのわずかな休憩……ただ、それだけ
わたくしも、タイクツしてましたの
SE:草を踏む
シーン2 お茶
SE:木の床を歩く
SE:ふすまをあける
こちらへどうぞ
SE:畳を歩く
SE:座る
ちょうど夕餉の前に、お茶でもしようとおもってましたの
茶をたてるなど、そこまではいたしません
急須でお茶をいれる……ごくごく普通のものですわ
ただこのお茶……氷で冷やしたものになります
SE:お湯を入れる
SE:氷の当たる音
急須に茶葉をいれ、そして氷も入れる……それに沸かした湯をそそぐ
そうすると冷えても茶が薄まらず、味も良い、そんなお茶が出来るのです
どうぞ
SE:コトッもしくは陶器の移動する音
そんな、まじまじと見ても何も出てきませんよ(笑いを含みながら)
一口、飲んで下さいませ、体がすぅーと冷えていきます。
SE:ゴク(左耳に音量振り切る)
間(2秒くらい)
……素直でよろしい
好みの味になったようで、わたくしも嬉しいですね……
どこで覚えたかというとなかなか思い出せませんね……
ああ、子供からでした、男の子ですね……
自分の母親が作ってくれたお茶だったらしく……わたくしに教えてくれました
少し前の話ですよ……もうその子も随分と成長しているでしょうね
お兄さんほどになっているでしょうか、なんてね
SE:サッシをあける
SE:夏虫
SE:風
空気の入れ換えしましょうか……もう空が夜になりかけてますね……
こんな蒼とオレンジが入り交じる時間は一瞬です
ほう、この時間のことをそう言うのですか
マジックアワー、魔法の時間なのですね
そんなに良い写真がとれるのですか、魔法のような
すごいと思いますが……ふふ、今日初めて、お兄さんの生き生きした顔を見たような気がします
写真がお好きなのですね……素敵な目でしたよ
宝石のようにキラキラで……(ささやき)舐めたくなるくらいで……
冗談ですよ、びっくりされてますけど……すこしどきついもの、嫌いじゃないでしょう?
SE:風(そよそよ程度)
良い風が出ましたね、縁側に出てみましょうか
そうだ……お兄さん
わたくしの膝の具合を見ていただけないでしょうか
SE:夏虫(フェードアウト)
シーン3 ひざまくら(声の比率は右8:左2(右に偏らせる)
SE:夏虫
SE:うちわで扇ぐ
どうしました、そんな神妙な顔で……なにかおかしいことでもあったのですか?(笑いを含む)
ほう、想像とは違うと……いえいえ、わたくしからすると何もおかしいことはありません
わたくしの膝……ああ、正確に言っていませんでしたね、膝枕の具合を見て欲しかったのです
(ささやき)どうでしょう……固すぎませんか、柔らかすぎませんか、張りはあるでしょうか
(ささやき)ほどよく、あなたを受け入れているでしょうか?
どうしたのです? そんなに顔を隠すようにして……
そうですか……顔が近いと……
くすっ……恥ずかしいのですか?
わたくしを意識しているのですか?
ふふ……からかいはこれだけにしときましょう
からかっても、何が出るわけでなさそうですしね
SE:うちわ(音が強くなってからフェードアウト)
SE:夏虫
この辺りの伝承で、惑い狐というものがあるそうです
知っていらっしゃいます?
そうですか……まあ、ほとんどこの土地に来ていないなら……当然でしょう
惑い狐はその名の通り、悪戯が好きな狐でしてね……
心がふわふわしていたり、悩みで沈んでいたり、ようは隙のある人間ばかりをねらって
悪戯したり、馬鹿にしたりを繰り返す狐のことです。
まあ、人間らしい理屈で言うならば……心の隙をつくることは、悪いモノに騙される、よくないことになる
そういうことから生まれた存在でしょう
かつて……アヤカシとよばれたものが信じられていた頃に、惑い狐が出たそうですよ。
お兄さんも騙されてはいけませんよ……こんな黄昏時ほど、アヤカシが動き回れる時間はないんですから
……あら、そうなのですか……
騙されてしまう、筆頭なんですか……
そう、なのですね……住んでいる所で、働いている会社で……
そんな唇を噛みしめてはいけませんよ、傷ついてしまいますよ……
……気づいてなかったのですか、そう、変らないのね
唇を噛む癖……
いいえ、何でもありませんわ
昔見た坊やと、同じ癖だったなと……記憶が混ざってしまったみたい
ここには休みに来たのですね……
いいところですよ……けして悪い土地じゃない
だからゆっくりとしていくといい……
ここの風も大地も人も……
そしてアヤカシでさえも……
あなたをイジメはしないのだから……
SE:うちわ
ふんふーん、ふふーん、ふーんふーん(鼻歌)
ふふ……寝てしまいましたか……
早いモノです、夏が過ぎてはいるのに、体にほてりは残り続ける
この姿が、少し苦しいですね……
SE:鈴の音
ふう、楽になった……
それにしても……あの童がずいぶんと大きくなって……
そのくせ、腑抜けた顔でやってきたとは
わたくしの一瞬は、童を大人にするには十分ね……
まったく、久しぶりだから遊んでやろうか、弄ってやろうかと思ったのに
あんな顔をされてしまったら、気が抜けてしまった
惑い狐から惑いを奪うなんて……これほどおかしなことはないでしょ
けれどまあ、久しぶりの人との時間
ゆるりと楽しみましょう……ふふ